浄土真宗は、日本で最大の勢力をもつ仏教の宗派です。

他の宗派にはない思想があり、他の宗派で読まれるお経が浄土真宗では読まれなかったり、逆に浄土真宗でしか読まれないお経もあります。
そのため理解が難しいこともあるかもしれません。

この記事では浄土真宗と他の宗派との違いや、浄土真宗で唱えるお経の種類や意味についてご紹介します。

 

浄土真宗とは?

浄土真宗とは仏教の宗派の1つで、鎌倉時代に浄土宗を開いた法然の弟子である親鸞(しんらん)が開きました。

浄土真宗の信者の数は日本全国に1200万人以上、寺の数は18,000か所以上に上り、日本で最大の勢力を持つと言えます。

 

他の宗派との違い

浄土真宗の他の宗派との大きな違いには次のようなことがあげられます。

  • 信者のことを「信徒」ではなく「門徒」と呼ぶ
  • 戒名ではなく「法名」を与えられる
  • 厳しい修行が必要ない
  • 「出家」の概念がない

このような違いは、次に紹介する「聖道仏教」か「浄土仏教」かの違いによって生まれています。

 

聖道仏教と浄土仏教とは?

日本の仏教は大きく、聖道仏教と浄土仏教に分けられます。

2つの大きな違いは、悟りを開いたり成仏することを自力に求めるか他力に求めるかです。

真言宗や天台宗などは聖道仏教に分類され、厳しい修行や戒律を守ること、祈りをささげるなどの行為を通して自力で悟りを開くことを説いています。

それに対して浄土真宗は浄土仏教に分類され、阿弥陀如来の本願、つまり阿弥陀如来の慈悲の力によって成仏をして極楽浄土に行くことを説いています。
そのため浄土真宗では厳しい修行を必要とせず、出家の概念が存在しないのです。

また戒名は釈迦の弟子として厳しい修行をする者に付けられる名前なので、浄土真宗では使用しません。
代わりに「法名」という、阿弥陀如来を拠り所にして生きると決意した者に与えられる名前が使用されます。
そのため法名は戒名と違って、生前に授かることもできます。

 

本願寺派と大谷派

浄土真宗には大きく本願寺派と大谷派の2つの宗派があります。

西本願寺を本山とする本願寺派と、東本願寺を本山とする大谷派です。
2つの宗派では唱えるお経の種類は同じですが、次の3つの違いがあります。

 

お経の読み方

読むお経は一緒ですが、音階などに違いが出ます。

また「南無阿弥陀仏」を本願寺派では「なもあみだぶつ」と読み、大谷派では「なむあみだぶつ」読みます。

 

焼香の回数

焼香の回数にも違いがあります。

本願寺派では1回、大谷派では2回です。この回数は、葬儀や法要の時間の問題や、参列人数によって変わる場合もあります。

 

仏壇・仏具

仏壇は本願寺派では柱や屋根が金箔で加工してあり、大谷派では黒塗りに加工してあります。

仏具に関しても、基本的に本願寺派は金色、大谷派では黒塗りのものが使用されます。

 

浄土真宗の死後の教えは?

浄土真宗は「死後すぐに誰でも仏になり、極楽浄土にいくことができる」という教えを説いています。

他の宗派の「故人は死後四十九日で極楽浄土に行けるかどうかの判決を下される」という教えとは対照的です。
そのため他の宗派ではお葬式に持参する香典袋には「御霊前」と書くのに対して、浄土真宗のお葬式に持参する香典袋には「御仏前」と書きます。

 

浄土真宗で読むお経は?

本願寺派でも大谷派でも読まれる、浄土真宗のお経にはどのようなものがあるのかをご紹介します。

 

正信偈とは?

浄土真宗では「正信偈(しょうしんげ)」を読みます。

正信偈は、親鸞が浄土真宗の要点をまとめた言葉であり、厳密に言うとお経ではありません。

正信偈の最初の2行では、親鸞が阿弥陀如来に救われたことの喜びを繰り返しています。
そして最後の2行では、全ての人に、ともに親鸞のような心になってほしい、そのためには七高僧の教えをただ信じなさいと、と説いています。
七高僧とは、親鸞が尊敬をする中国、インド、日本の高僧です。

 

浄土真宗の重要な3つのお経

浄土真宗では浄土三部経と呼ばれるものを経典としています。

浄土三部経を構成するのは、大無量寿経、観無量寿経、阿弥陀経の3つのお経です。

 

大無量寿経

大無量寿経は浄土真宗の中で最も重要視されているお経です。

大無量寿経には、阿弥陀如来の本願が説かれています。
阿弥陀如来の本願とは、阿弥陀如来の慈悲ということです。

大無量寿経の中でお釈迦様は阿弥陀如来の言葉を借りて「どんな人も必ず助ける、絶対の幸福に」と誓っています。

 

観無量寿経

観無量寿経は、極楽浄土に往生する方法として16の観想を説く経典です。

お釈迦様が霊鷲山にいた時代、マガダ国王の韋堤希夫人が子供の阿闍世に幽閉されるという悲劇が起きました。
その際にお釈迦様が韋堤希夫人を本当の幸せへと導いた説法の内容が書かれたのが観無量寿経です。

 

阿弥陀経

阿弥陀経は小経とも呼ばれるお経です。

弟子とお釈迦様の掛け合いの形で進んでいくお経が多いですが、阿弥陀経はお釈迦様だけが語っていくという特徴があります。

お釈迦様が阿弥陀如来の力の偉大さと西方にあるという極楽浄土のありさまについて称え、他の仏もそれを保証しているという内容です。
みな極楽浄土へ往生すべきと説いています。

親鸞は阿弥陀経には、無量寿経の所説と比べても、阿弥陀経には他力本願の説がよく流れていると解釈しました。

 

浄土真宗で南無阿弥陀仏を唱える理由

浄土真宗では南無阿弥陀仏という念仏を唱えます。
浄土真宗において南無阿弥陀仏には「阿弥陀如来を心から信じる」という意味が込められており、開祖である親鸞が「極楽浄土への往生を信じ、念仏を唱えること自体が信仰の心である」と説いているためです。

南無阿弥陀仏の「南無」は、「帰依します」という意味です。
つまり南無阿弥陀仏は、「阿弥陀仏に帰依します」という意味になります。
特に浄土真宗では「阿弥陀如来に全てお任せいたします」「阿弥陀如来に心から従います」という感謝のを込めて読むとされています。

浄土宗では南無阿弥陀仏と10回唱える十念という唱え方をしますが、浄土真宗では唱える回数に決まりはありません。

また浄土真宗における「南無阿弥陀仏」は阿弥陀如来から門徒に向かって「あなたを必ず助けます」という約束をしている、阿弥陀如来からも呼びかけているという解釈もあります。

 

般若心経を読まない理由は?

浄土真宗は阿弥陀如来の慈悲の力によって誰もが成仏をするという他力本願を教えとしているため、修行により自らの力で悟りを開いたり、成仏することを求めるお経である般若心経を読むことはありません。

真言宗や曹洞宗などをはじめとするその他の宗派では、極楽浄土に行くためには、自ら悟りを開く必要があるとされています。
そのことが説かれているのが般若心経です。

浄土真宗では、阿弥陀如来の慈悲の力によって救われるという教えがあるため般若心経を読む必要がないのです。

まとめ

この記事では浄土真宗と他の宗派との違いや、浄土真宗で唱えられるお経の種類や意味についてご紹介しました。

内容をまとめると次の通りです。

  • 浄土真宗は阿弥陀如来の慈悲によって、すべての人が成仏をするという他力本願の考えを持つ宗派である
  • 浄土真宗では正信偈を唱える
  • 浄土真宗では大無量寿経、観無量寿経、阿弥陀経の浄土三部経が重視されている
  • 浄土真宗では自力での成仏を説く般若心経を唱えない

以上です。

浄土真宗は、全ての人が救われるという他の宗派とは異なる教えを持ちます。
唱えるお経や作法には大きな違いがあるので、それらを理解しておきましょう。