お盆の供養と一緒に行われることが多いのが施餓鬼(せがき)です。

言葉は知っていてもその意味や、マナーなどが分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では施餓鬼の意味、行う時期や宗派ごとの違い、お布施などのマナーについてご紹介します。

これまで参加したことない方は、この記事で意味やマナーを確認して参加してみることをオススメします。

 

施餓鬼とは?

施餓鬼とは、無縁仏や生前の悪行により餓鬼となった霊、つまり供養されることがない死者に対して施しを行う仏教における供養の1つです。

お盆で祖先を供養する際に一緒に行われることが多いものの、必ず行わなければならないものではありません。

 

餓鬼とは?

餓鬼とは、仏教における六道のうちの1つ、餓鬼道に落ちた死者のことです。

生前に強欲そして嫉妬深い心や行為、悪行をした者がその罪として餓鬼道に落ちるとされています。
餓鬼が飲食をしようとすると、目の前で食べ物や飲み物が炎と化して、それが叶いません。
そのため常に飢えと渇きに苦しんでいるとされています。

そのような状態にある餓鬼にも飲食物などを与えるのが施餓鬼です。
そうすることにより、徳を積むことができると言われています。

 

由来

施餓鬼はお釈迦様の教えの1つ「救抜焔口餓鬼陀羅二尼経(ぐばつえんくがきだらにきょう)」が由来となっています。

お釈迦様の弟子の1人である阿難尊者(あなんそんじゃ)が、餓鬼に施しをしたことで短命を逃れて寿命を延ばしたというのが「救抜焔口餓鬼陀羅二尼」の内容です。

阿難尊者(あなんそんじゃ)がある日瞑想をしていたら、目の前に餓鬼が現れます。
そして、その餓鬼が「お前は3日目に死んで、餓鬼になる」と告げます。
阿難尊者は驚きそして恐れ、餓鬼の予言を逃れる方法をお釈迦様に聞き、その通りに餓鬼に対して飲食を施しました。
すると餓鬼は救われ、阿南尊者は死を逃れることができたのです。

 

施餓鬼ではなにをする?

施餓鬼はお寺で法要を行ったり、お坊さんが家を回ってお経を唱えたりします。

また、お寺で行われる際には、法要の他に法話やゲストを招いてのトークイベント、落語や漫談、楽器の演奏などちょっとしたイベントのようなことが行われる場合も多いです。

供養の他に、お寺と檀家または檀家同士での交流の場としても機能しています。

 

宗派別の施餓鬼

施餓鬼は仏教の考え方ですが、宗派によって施餓鬼がなかったり呼び方が異なったりします。

浄土真宗

浄土真宗では施餓鬼法要を行いません。

浄土真宗では人は亡くなるとすぐに仏になるという即身成仏の考え方をするため、餓鬼道に落ちることもないためです。

 

曹洞宗

曹洞宗では施餓鬼ではなく「施食会(せじきえ)」と呼びます。

曹洞宗では「餓鬼」という表現が差別的である、身分の差が生じるという考え方をするためです。

 

真言宗

真言宗では他の宗派よりも、通年でより多くの回数で施餓鬼を行います。

 

浄土宗

浄土宗の施餓鬼は大規模に行われる傾向にあります。

浄土宗では施餓鬼を重要な法要の1つとしているためです。

 

施餓鬼はいつ行う?

施餓鬼には「いつ行わなければならない」という決まりは特にありません。

しかし、先祖への供養と一緒に餓鬼への施しをすることが徳を積むのにつながるという考え方から、お盆の時期に行われる場合が多いです。

宗派や地域によっても異なりますが、通年で行われることもあれば、お盆とお彼岸の時期と年に2回だけ行う場合もありま
す。

施餓鬼のお布施

お坊さんにお経を読んでもらう際にはお礼としてお布施をお渡しします。それは施餓鬼でも例外ではありません。

 

金額相場

施餓鬼でお寺にお渡しするお布施の相場は、3,000~10,000円ほどです。

お寺からの案内などに「施餓鬼供養料」として金額が書いてある場合もあります。
その場合には書かれた金額を用意しましょう。

もしお坊さんを自宅などにお招きして供養をしてもらった際には、お布施とは別に「御車代」つまり交通費として5,000~10,000円をお渡しします。

 

表書きの書き方

施餓鬼のお布施の表書きには「御布施」と書くのが一般的です。

「施餓鬼料」や「施餓鬼供養料」と書く決まりがあるお寺もあります。
もしお寺からの案内などに「施餓鬼料」や「施餓鬼供養料」という言葉があったら、その言葉に揃えて書きましょう。
表書きは包みの表面の上段中央に書くものです。

下段中央には、フルネームまたは「○○家」と家の名前を書きます。

葬儀などに用いる香典とは異なるため、薄墨ではなく濃い墨を使うのがマナーです。
薄墨は「急いで駆けつけたため十分に墨をすれなかった」「悲しみの涙で墨が薄まってしまった」という故人や遺族への気持ちとして使用するものです。

毛筆か筆ペンが好ましいですが、どうしても用意ができなかった場合には黒いサインペンなどでも問題ありません。

 

裏面の書き方

裏面には住所と金額を書きます。

左下の方に住所を書き、左側に続けて「金○○圓也」としますが、ここでの金額は旧字体で書くことに注意しましょう。
1であれば「壱」、3であれば「参」、万は「萬」です。

包み方

お布施は奉書紙と呼ばれる白い紙か、白い無地の封筒に包みます。

葬儀などの香典では新札を使わないなどのマナーがありますが、お布施は意味合いが異なるため、反対にできるだけ新札を使うようにしましょう。

奉書紙で包む場合も封筒を用いる場合も、お札の向きは肖像画が表面の上側に来るようにします。

 

施餓鬼のその他マナー

施餓鬼に関して、お布施以外にも気を付けておくべきマナーをご紹介します。

服装

施餓鬼での服装は、平服です。

葬儀などではないため喪服を着る必要はありません。

黒やグレー、濃紺などの無地のスーツ、女性であればワンピースなどが相応しいでしょう。

お盆の暑い時期に行われることが多いため、ジャケットを羽織らずにワイシャツの状態で参加する方も多いです。

寺や地域によっては決まりがあるので、その際にはその決まりに従いましょう。

 

数珠

数珠を持っている場合には施餓鬼にも持参します。

自身の信仰している宗派のもので構いません。

ただし、数珠の貸し借りはよくないこととされているので、もし持っていない場合には持参しない、またはこれを機に購入を検討しましょう。

 

施餓鬼旗の扱い

施餓鬼旗は、施餓鬼に参列した方に配られる旗です。

5色の旗が1組として渡されたり、1つの旗が5色になっていることもあります。

配られたらお墓や精霊棚に飾り、捨ててしまったりすることがないようにしましょう。
お盆が終わったら、お寺などでお焚き上げをするのが一般的です。

 

まとめ

施餓鬼の意味、行われる時期や宗派別の考え方、お布施などのマナーについてご紹介しました。

概要をまとめると次の通りです。

  • 施餓鬼とは、無縁仏や餓鬼などの死者を供養する法要の1つ
  • 浄土真宗に施餓鬼の考え方はなく、曹洞宗では施餓鬼を施食会と呼ぶ
  • 施餓鬼はお盆に行われることが多いが、決まりはない
  • お布施の金額相場は3,000~10,000円だが、お寺から指定があればその金額に従う
  • 服装はシンプルな平服を着用する

以上です。

施餓鬼は必ずしも行わなければならないものではありませんので、馴染みのない方も多いかもしれません。

もしこれまで参加したことがなくても、意味や由来を知り興味を持ったら、お付き合いのあるお寺やご近所のお寺の施餓鬼法要に参加してみてください。