宗教上の理由や個々の思想の観点から、日本で土葬ができるものかどうか、気になっている方は少なからずいるのではないでしょうか。

日本では法律上、土葬を選択しても問題はない一方で、さまざまな制約があることに注意しなければなりません。

 

今回の記事では、日本での土葬について詳しく解説しています。

土葬ができる地域や、土葬を選択することによるメリット・デメリットも紹介しているため、土葬を考えている方は参考にしてみてください。

日本では土葬が禁止されているのか?

日本では土葬は禁止されていません。日本での土葬の取り決めに関して、次の内容で解説します。

  • 法律では禁止されていない
  • 日本の土葬の歴史
  • 土葬には許可が必要

法律では禁止されていない

日本の法律では土葬は禁止されていません。

墓地、埋葬等に関する法律では、「埋葬」の言葉を明確に「死体を土中に葬ること」と定義しています。

また「墳墓」についても、「死体を埋葬、または焼骨を埋蔵する施設」と明確に記されています。

 

このことから、法律上は遺体を火葬せずに土に埋めることも認められていることがわかるでしょう。

一方で、法律上は問題ありませんが、実際にはさまざまな制約があることも覚えておかなければなりません。

日本の土葬の歴史

日本の土葬の歴史を紐解くと、どのように変化してきたのかがわかります。

江戸時代では、火葬に否定的な考えを持つ儒教が広まりました。

その影響で、それまで火葬が一般的だった大名の葬儀が、土葬に変更されるケースも出てきます。

 

一方で、明治時代になると明治政府が火葬禁止令を出して、国を挙げて土葬を推進する時代もありました。

その後、伝染病の広がりや、都市部での土地が不足する現実的な問題に直面して、火葬禁止令は解除されることになり、少しずつ火葬が一般的になっていきます。

 

現代の葬儀で見られる餅を食べたり、おこわを炊いたりする習慣は、一説によると昔の土葬時代の名残です。

墓穴を掘る人たちの体力補給として用意された食事が、今も伝統として残っているとされています。

土葬には許可が必要

土葬を行うには、いくつかの手続きが必要です。

まず、火葬でも土葬でも、故人の死亡届を提出した市町村から許可を得る必要があります。

土葬の場合は特別に、土葬許可証の書類を自治体から発行してもらわなければなりません。

 

さらに、その土葬許可証を埋葬予定の墓地管理者に提出して、管理者からも許可を得る必要があります。

自治体からの土葬許可証と、墓地管理者からの許可と二重のチェックが必要です。

日本で土葬できる場所

日本で土葬できる場所は限られています。

土葬ができる地域に加えて自治体の条例や、実際に土葬を行う墓地・霊園に関しても調べることが必要です。

また、提携している墓地・霊園を紹介してくれる団体もあります。

 

それぞれの内容を詳しくみていきましょう。

土葬ができる地域

現代の日本でも、土葬が行われている地域があります。

次の都道府県の一部地域が該当します。

  • 北海道
  • 宮城県
  • 栃木県
  • 茨城県
  • 岐阜県
  • 京都府
  • 奈良県
  • 三重県
  • 鳥取県
  • 高知県

 

これらの一部地域では、今でも土葬の習慣が残っているのが現状です。

特に離島や限界集落など、火葬場へのアクセスが難しい地域では、今でも土葬が選択肢の1つです。

地理的な条件や伝統的な習慣によって、現代でも土葬は選択されています。

土葬ができる墓地・霊園

土葬を希望する場合、まず確認しなければならないのが、希望する墓地・霊園で土葬が可能かどうかです。

 

土葬を希望する場合は、地域の自治体の条例をしっかりと確認しなければなりません。

そこから、土葬を許可している墓地や霊園を探し出し、具体的な条件や手続き、費用などもあらかじめ調べておく必要があります。

土葬の会への相談

土葬を相談できる専門機関として、「土葬の会」があります。

2001年8月に設立された土葬の会は、宗教や人種を問わず、土葬を希望する人々の相談に応じていることが特徴です。

 

提携する墓地や墓苑の紹介から、墓地の使用許可申請、実際の埋葬時の穴掘りまで、土葬に関するさまざまなサポートを提供してくれます。

土葬の会ホームページ

土葬をするメリット・デメリット

土葬にはメリットもある一方、デメリットもあることに気をつけなければなりません。

火葬を避ける信仰に沿った葬儀にできる一方で、費用面や周囲からの理解が得られにくいなどさまざまなデメリットがあります。

 

土葬をするメリット・デメリットを詳しく解説します。

土葬をするメリット

土葬には、さまざまなメリットがあります。

人間は本来土に還るとする日本古来の自然な考え方に寄り添えることが、まずはメリットとして挙げられます。

大切な方を火葬して骨にすることに抵抗を感じる方もいますが、土葬なら、故人の生前そのままの姿で、穏やかに見送れることもメリットの1つです。

 

また、キリスト教には「死後の復活」の教えがあり、火葬を避ける信仰を持っている方にとって、土葬は1つの選択肢となることもあるでしょう。

イスラム教では火葬がタブーとされているなど、それぞれの方の大切にしている信仰に沿った、見送り方を実現できます。

 

火葬では、ガスや灯油などの燃料を使う必要があり、地球温暖化の要因になったり、環境に優しくない物質が出てしまったりすることもあるのが課題点です。

一方で、土葬は大地に還る自然な方法として、環境への負担が少ない選択といえます。

土葬をするデメリット

土葬にはメリットがある一方で、土葬を選ぶ際には、いくつかのポイントに気をつけなければなりません。

まず、土の中に埋葬するためには、広めの土地が必要なことです。

深さも確保しなければならないので、都会では適した場所を見つけるのが難しい傾向があります。

 

また、遺体が自然に土に還っていく過程で、地下水への影響や衛生面での心配があり、周辺環境への配慮も大切になってくるでしょう。

 

費用面でも、土葬の場合は負担が大きくなりがちです。

土地を確保したり、埋葬のための準備をしたりする費用が、火葬の場合と比べると高くなる傾向があります。

 

現代の日本では火葬が一般的となっているため、土葬の選択に家族や親戚、知人などから理解を得るのに時間がかかることもあるでしょう。

周りの方々との丁寧な話し合いが必要です。

土葬を掘り起こして火葬はできる?

土葬を選択した後でも、掘り起こして火葬に変更は可能です。

埋葬方法を変更することを「改葬」と呼びます。

 

改葬を考える際は、まず家族や親族の方々、そして寺院に、改葬することを丁寧に伝えなければなりません。

理解を得たら、次の段階として、現在のお墓がある市町村の役所で改葬許可申請書の手続きが必要です。

 

役所から改葬許可証をいただいた後は、お墓を管理されている方から埋葬証明書を発行してもらいます。

これらの手続きを経て、故人のお骨を丁重に掘り出す作業へと進みます

掘り出し作業は、故人への深い敬意を持って、慎重に進めなければなりません。

まとめ

今回の記事では、日本での土葬の扱いについて解説しました。

日本の法律では土葬は禁止されていません。

 

土葬時の手続きとして、自治体からの土葬許可証と、墓地管理者からの許可と二重のチェックが必要です。

また、日本で土葬できる場所は限られているため、土葬ができる地域に加えて自治体の条例や、実際に土葬を行う墓地・霊園に関して調べる必要があります。

 

土葬に関するメリット・デメリットもあわせて紹介しているため、土葬も1つの選択肢として考えている方は参考にしてみてください。