近年、従来の仏式や神式とは異なる「無宗教葬」の選択肢が注目を集めています。無宗教葬は自由な演出を取り入れられるなどメリットも多くありますが、儀式の進行や内容をゼロから考える必要があるなど、デメリットもあるため注意が必要です。

今回の記事では、無宗教葬の流れに加えてメリット・デメリットや注意すべきポイントも紹介しているため、無宗教葬を検討している方は参考にしてみてください。

無宗教葬儀とは?

無宗教葬儀とはその名の通り、読経や焼香などの宗教的な儀式に捉われない形式の葬儀です。僧侶を招くこともなく、故人やご遺族の想いに寄り添った、より自由な形での送り方を実現できます。

「自由葬」とも呼ばれるように、祭壇の設営から式次第まで、故人の人柄や生前の想い出を反映した演出が可能です。好きな音楽を流したり、思い出の写真やビデオを上映したり、参列者との思い出を語り合ったりと、柔軟なアレンジができます。

かつては一般的ではなかった無宗教葬ですが、葬儀に対する価値観の多様化とともに、徐々に認知され、選択される機会が増えてきています。「自分らしい」「故人らしい」最期の時間を大切にしたい想いが、認められてきた変化の背景にあるのではないでしょうか。

無宗教葬儀の流れ

無宗教葬儀は次の流れで執り行われます。

  • 参列者の入場
  • 開式の辞
  • 黙祷
  • 献奏
  • 感謝の言葉
  • 献花
  • 閉式の辞

それぞれの詳細を解説します。

参列者の入場

無宗教葬での参列者の入場は、故人や遺族の想いを反映した、印象的な時間となるでしょう。会場に足を踏み入れた瞬間から、故人らしさを感じられる演出を取り入れられます。

生前に故人が愛していた音楽を静かに流したり、思い出の曲をバンドや吹奏楽で生演奏したりすることも可能です。厳かな雰囲気の従来の葬儀とは異なり、明るく温かな雰囲気で故人との最後の時を共有できます。

開式の辞

無宗教葬の開式の辞では、参列者に、なぜ無宗教葬を選んだのか、その背景にある想いを遺族から丁寧に説明することで、参列者の皆様の理解を深めてもらえます。

「故人の生前の想いを大切にしたかった」「より自由な形で最後の時間を共有したいと考えた」など、無宗教を選択した理由を心を込めて伝えることで、従来の葬儀とは異なる雰囲気に戸惑われる方々にも、理解いただけるでしょう。

開式の冒頭で想いを共有することで、温かな雰囲気で式を進められます。

黙祷

無宗教葬では、仏式のようにお経を読み上げる場面はありませんが、代わりに参列者全員で心を込めた黙祷を捧げる時間を設けます。初めて無宗教葬に参列される方にとっては、お経のない静寂の時間に少し戸惑いを感じるかもしれません。

無宗教の黙祷の静かな時間は、それぞれの想いを胸に故人との思い出に浸る大切なひとときです。参列者の皆様には、目を閉じて少し頭を下げていただき、故人との思い出や感謝の気持ちを心の中で語りかけていただきます。

献奏

献奏は、もともと神仏への奉納として音楽を演奏する儀式でしたが、現在では故人の霊前で行う演奏全般を指すようになりました。無宗教葬では、献奏の時間をより自由に、故人らしい形で演出できます。

生前に故人が親しんでいた曲や、家族との思い出の曲を選んで演奏したり、CDで流したりできるほか、音楽に合わせて故人の笑顔あふれる写真をスライドショーで映したり、懐かしい映像を上映したりすることもできるでしょう。

感謝の言葉

無宗教葬でも、遺族を代表して感謝の言葉を述べる時間は大切にされています。この場面では、参列してくださった皆様への心からの御礼と、故人との関わりに対する感謝の気持ちを、言葉に込めて伝えましょう。

「本日は足元の悪い中お集まりいただき、誠にありがとうございます」とする参列への感謝や、「生前は父を温かく見守っていただき、本当にありがとうございました」などの生前の交流への感謝など、心のこもった言葉を述べます。

形式は違えども、大切な方々への感謝を伝える想いは、どのような葬儀でも変わることはありません。

献花

無宗教葬では、仏式の焼香にかわって、参列者が花を捧げる献花を選択できます。献花台に置く花は、菊や白いカーネーションはもちろん、故人の想い出に寄り添った花でも問題ありません。また、焼香を希望する場合は、焼香の選択も可能です。

参列者それぞれの形で、故人への想いを込めたお別れの時間を共有できるのも、無宗教葬ならではの特徴といえるでしょう。

閉式の辞

無宗教葬の最後を締めくくる閉式の辞では、これまでの厳かな時間を共にしてくださった参列者への感謝と、式の終了を告げる言葉が述べられます。故人との最後の別れの場としての葬儀が、終わりを迎える大切な瞬間です。

閉式の後は、一般的な流れとして故人が眠る棺が静かに会場を出発し、火葬場へと向かいます。

無宗教葬で執り行うメリットやデメリット

無宗教葬には、その特徴ゆえにメリット・デメリットがあります。メリット・デメリットをそれぞれよく理解し把握したうえで無宗教葬を選択するとよいでしょう。

無宗教葬で執り行うメリット

無宗教葬のメリットの1つは、宗教者による儀式を必要としないため、お布施などの御礼の費用が不要となることです。葬儀にかかる経済的な負担を軽減できます。

さらに、無宗教葬ならではのメリットとして、故人らしさを存分に表現できる点があります。好きだった音楽を流したり、思い出の写真を飾ったり、大切にしていた趣味に関連した装飾を施したりと、故人の人柄や生き方を反映した、温かみのある送り方の選択が可能です。

無宗教葬で執り行うデメリット

無宗教葬を選択する際に、親族や友人の中には、伝統的な葬儀との違いに戸惑いや違和感を覚える方も少なからずいることに配慮しなければなりません。そのため、事前に丁寧な説明と対話が必要となることもあります。

また、儀式の進行や内容をゼロから考える必要があるため、準備にかかる時間や労力が多くなる場合があるでしょう。さらに、仏式のようなお彼岸やお盆など定期的な供養の機会が自然には設けられないため、故人を偲ぶ場を意識的に作っていく必要があります。

無宗教葬で執り行う場合に気を付けるポイント

 

無宗教葬で執り行う場合は、次のポイントに気をつけなければなりません。

  • 菩提寺とトラブルにならないようにする
  • 家族・親族へはあらかじめ確認しておく

それぞれの注意点を詳しく解説します。

菩提寺とトラブルにならないようにする

無宗教葬を選択する場合でも、先祖代々の墓がある菩提寺には、故人が亡くなられたことをしっかりと連絡しておきましょう。

将来的にお墓への納骨を考えている場合は、事前に菩提寺とよく相談することが重要です。一切相談なく無宗教葬を行ってしまうと、後々の納骨を断られるなど、予期せぬトラブルに発展する可能性があります。

家族・親族へはあらかじめ確認しておく

無宗教葬を選択する際には、家族や親族との事前の話し合いが、大切な意味を持ちます。特に年配の方々の中には、伝統的な宗教による葬儀に深い思い入れを持っている方もいるため、無宗教葬の選択に戸惑いを感じる場合もあるでしょう。

そのため、なぜ無宗教葬を希望するのか、どのような形で故人を送りたいと考えているのかなど、その想いや理由を丁寧に説明し、家族や親族の理解を得ることが大切です。

事前にしっかりと話し合いの時間を持つことで、より良い形での葬儀の実現につながっていくことでしょう。

まとめ

今回の記事では、無宗教葬儀の概要や選ぶメリットを解説しました。無宗教葬儀とはその名の通り、読経や焼香などの宗教的な儀式に捉われない形式の葬儀です。僧侶を招くこともなく、故人やご遺族の想いに寄り添った、より自由な形での送り方を実現できます。

無宗教葬は、お布施などの御礼の費用が不要となるケースが多いため、葬儀にかかる経済的な負担を軽減できます。また、従来の形式にとらわれない故人の趣向に合わせた自由な演出ができることが、無宗教葬が選ばれる大きな理由の1つです。

一方で、無宗教葬にはデメリットもあり、事前に菩提寺に話しておくなど注意点もあります。デメリットや注意点も詳しく解説しているため、無宗教葬を検討している方は参考にしてみてください。