同じ仏式のお葬式でも宗派によって独特の内容や流れがあります。

中でも真言宗はお葬式の内容が他の宗派に比べて独特です。

そのため、真言宗のお葬式について不安がある方も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、真言宗に関する知識やお葬式の流れ、参列する際のマナーについてご紹介します。

多少なりとも知識を持っておくことで、真言宗のお葬式に関する不安が解消されるでしょう。

 

真言宗とは?

真言宗とは、仏教の中の宗派の1つです。

平安時代初期、「弘法も筆の誤り」ということわざで有名な弘法大師(空海)が中国への留学後に、開祖となり日本に広めました。

弘法大師が中国で学んできた密教を日本に伝えたのが真言宗の始まりと言われています。

密教とは、教えを広く分かりやすく公開する顕教とは反対に、師から弟子にその教えや儀礼について口伝によって受け継がれていくものです。

真言宗では大日如来を本尊としています。

大日如来は宇宙の根源とされていて、宇宙の真理そのものとされている仏です。

真言宗では、悟りの境地に察して宇宙の真理を極め、大日如来と一体化することで生きながらにして仏になることを目指します。

仏と同じように行動し、心を清く正しく保つことができれば、生きながらにしても誰でもすぐに仏になれるという「即身成仏」の考えです。

真言宗は、現在大きく古義真言宗・新義真言宗・真言律宗の3つに分かれ、さらにそこから宗派が18に分かれることから真言宗十八本山と呼ばれています。

なお、寺院の自己申告制のため正確な信徒数は図れませんが、最も主流の高野山真言宗だけでも全国に約550万人の信徒がいると言われており、大きな宗教と言えるでしょう。

密教であること、そして「即身成仏」という独特の教えから、お葬式は他の宗派とは少し異なる独特の特徴を持っています。

 

真言宗のお葬式の特徴

真言宗のお葬式の特徴は「灌頂(かんじょう)」と「土砂加持(どしゃかじ)」という独特の儀式を行うことです。

灌頂(かんじょう)とは

灌頂(かんじょう)とは、故人の頭に水をそそぐ儀式です。

もともとインドで国王が即位する際に行われていた儀式が、仏教儀礼に転じたと言われています。
頭に水をそそぐことにより、故人が仏の位にあがるという非常に重要な意味を持つ、密教独特の儀式です。

土砂加持(どしゃかじ)とは

土砂加持(どしゃかじ)とは、清水で洗い清めた土砂を棺の中に入れる儀式です。
光明真言を唱えながら行い、生きているうちの災いや罪を払うとされています。
罪を滅ぼして成仏するために善を生むということから「滅罪生善」という意味を表す、こちらも重要な儀式です。

 

真言宗のお葬式の流れ

続いて、大まかな真言宗のお葬式の流れについてご紹介します。
真言宗ならではの独自の流れも把握しておき、当日戸惑わないようにしましょう。

僧侶の入場

お坊さんが入場します。
焼香と出棺以外のこの後の一連の儀式はお坊さんが行いますので、静かに座って見守りましょう。

塗香・三密観・護身法・加持香水

塗香:故人の身体に香を塗り、穢れを払います。
三密観:身密、口密、意密の三密と呼ばれる教えを元に、身、口、意に吽の字を置き、即身成仏させます。
護身法:5種の印を結び、真言を唱え、心身を整えます。
加持香水:浄化した香水を故人に掛けることで、煩悩を払います。

三礼・表白・神分・声明

三礼:仏法僧を礼拝するために周礼・儀礼・礼記の三礼を唱えます。
表白:大日如来に祈りを捧げます。
神分:降りてきた大日如来に対して、降臨のお礼と、故人へのかごと滅罪を願います。
声明:仏典に節をつけた音楽です。お坊さんが節をつけて仏典を唱えます。

授戒作法

仏門に入る儀式として偈文を唱えながら、故人の髪を剃ります。実際に剃るのではなく、剃るふりをするだけの場合も多いです。
そして故人へ戒名を名付けます。ここで故人が大日如来の弟子として帰依することになります。

引導の儀式

再び表白と神分を行い、地獄の道に行くことのないよう不動灌頂や弥勒三種の印明を授けることで、故人の即身成仏を祈ります。

墓前作法(破地獄)

破地獄の真言を与えて、故人の心にある地獄を取り除きます。
そして金剛杵を与える儀式です。
近年は破地獄のみ省略されることが多々あります。

焼香・出棺

お坊さんが、成仏を祈る諷誦文を唱えている間に焼香を行います。
焼香は後ほど詳しく説明しますが、真言宗では3回行うのが正式です。

焼香が終わったら、お坊さんが大師様から繋がると言われる導師最極秘印を結び、指を3回鳴らします。
これは撥遣という魂を抜く儀式です。
そして棺の上に花を添えたら出棺となります。

 

真言宗のお葬式のマナー

続いて、真言宗ならではのお葬式のマナーをご紹介します。

数珠

真言宗のお葬式のマナーで最も特色があるのが、数珠についてです。
真言宗は他の宗教よりも数珠を重要視しています。

真言宗の数珠は一般的に主珠が108個、親珠から7個目と21個目に四天珠、2つの親珠から2本ずつ房が付いているのが特徴です。
長い一連の数珠を二重にして持つため、「振分数珠」とも呼ばれています。
男女では珠の大きさが少し異なるだけで、大きな違いはありません。

合掌の際には、両手の中指に親珠と房が外側にくるようにしてかけて、そのまま手を合わせます。
持つときには、親珠を上にして二重にした状態で房を握るようにして持ちましょう。

ただし、参列の際には自身の信仰している宗教の数珠で問題ありませんので、真言宗用の数珠を改めて買う必要はありません。
特定の宗派への信仰を持っていない場合には、どんな宗派にも使用できるタイプの数珠を1つ持っておくといいでしょう。

焼香

真言宗のお葬式での焼香は3回です。
焼香台の前に進み、遺族に一礼をしましょう。
そして焼香台の前で合掌、一礼、右手の人差し指と中指、親指の3本で抹香をつまんで、額の高さまであげてから香炉に置きます。
これを3回繰り返した後に合掌、焼香台から下がり、遺族に一礼をするのが真言宗でのお葬式の焼香のマナーです。

真言宗の場合、正式には3回焼香をしますが、参列者が多い場合や時間に限りがある場合、1回に省略するように案内されることもあります。
その際には案内に従い、省略をして焼香をしましょう。

香典

香典については他の宗派とあまり大きな違いはありません。
真言宗の場合、お葬式に持参する香典の表書きは「御霊前」または「御香典」が適切です。
四十九日を過ぎている場合には「御仏前」または「御香典」としましょう。
包む金額相場も他の宗教と特に変わりなく、友人知人であれば3,000~5,000円、親族であれば1~10万円となります。

 

まとめ

ここまで真言宗の基礎知識、真言宗のお葬式の特徴や流れ、マナーをご紹介しました。
まとめると次の通りです。

  • 真言宗とは、弘法大師(空海)が日本で広めた密教で即身成仏の教えが基本
  • お葬式では、灌頂・土砂加持という独特の儀式を行う
  • 真言宗のお葬式での正式な焼香回数は3回
  • 真言宗では数珠を重要視しているため、信徒の場合には正式なものを用意する。参列者の場合や、他の宗派を信仰している場合などは、その宗派のものでも問題はない

以上です。

独特な用語や儀式がありますが、ほとんどお坊さんが主導してくれますので、完璧に覚える必要はありません。

しかし、ある程度知識やマナーを知っておくと、戸惑うことなく落ち着いて故人を偲ぶことができるでしょう。