仏教の数ある宗派のうちの1つである日蓮宗。
もし日蓮宗のお寺にお墓がある場合には、日蓮宗の形式にそって葬儀を行います。
日蓮宗の葬儀には日蓮宗独自の特徴があります。
「日蓮宗の葬儀で何をするのかが分からない」
「日蓮宗の葬儀でのマナーが分からない」
そんな悩みを解決するため、この記事では日蓮宗の葬儀の特徴やマナーについて解説します。
日蓮宗とは?
日蓮宗とは仏教の宗派の1つです。
鎌倉時代に日蓮(日蓮聖人)によって開かれました。
大地震や噴火などの災害が多発、飢餓や疫病も蔓延していた平安時代後期から鎌倉時代にかけて、仏教によって人々を救おうと様々な宗派が生まれることになります。
日蓮宗はそのうちの1つです。
日蓮は、お釈迦様が説いた「妙法蓮華経(法華経)」を重要視しています。
法華経は、身分や階級に関係なく万人が平等に成仏できるという教えです。日蓮はそれが仏教思想の原点であり、何よりも重要視すべきものだと説きました。
そのため日蓮宗では「法華経に帰依します」という意味の「南無妙法蓮華経」を唱えることが重要な修行とされています。
日蓮宗と日蓮正宗の違い
日蓮宗と日蓮正宗は元々は同じ日蓮宗です。
しかし日蓮聖人の死後、弟子たちの考え方の違いから分裂をしました。
大きな違いは根本となる仏である「本仏」として何を指しているかです。
日蓮宗では、釈迦を本仏としている一方、日蓮正宗では日蓮聖人を本仏としています。
日蓮正宗では、日蓮聖人をキリストや釈迦と同じように崇拝の対象として考えているため「日蓮大聖人」と呼んでいます。
また葬儀においては、日蓮正宗では花の祭壇を使わずに樒を使うという違いがあります。
日蓮宗の葬儀の特徴
日蓮宗の葬儀の特徴的な点は「南無妙法蓮華経」の題目を参列者も含めた全員で唱えることです。
唱えることで故人を霊山浄土に送り出すという意味合いを持ちます。
日蓮宗の葬儀の流れ
日蓮宗の葬儀は一般的に次のような流れで行われます。
導師や司会者が適宜案内をしてくれますので、喪主や参列者として全て覚えておく必要はありません。
1.開式:司会(葬儀社のスタッフ)が開式の言葉を述べます。
2.入場:導師が入場します。
3.総礼:全員で合掌をして「南無妙法蓮華経」を3回唱えます。
4.道場偈:諸仏諸尊を迎える声明曲を流します。
5.三宝礼:仏教で三宝と呼ばれる仏・法・僧の要である釈迦・法華経・日蓮に祈りを捧げます。
6.勧請:霊山浄土にいる仏や菩薩、神々、日蓮聖人を葬儀の場に降臨させます。
7.開経偈:法華経の功徳を称えます。
8.読経:法華経の中でも特に重要な部分を読経します。
9.咒讃鐃鈸:供養をするための演奏を行います。
10.開館:導師が棺の前まで行き、中啓と呼ばれる扇子のようなものを用いて棺の蓋を3回打ちます。
11.引導:導師が払子と呼ばれる動物の毛や朝を束ねて柄を付けたものを3回振り、3回焼香、故人をあの世に導く引導文を読み上げます。
12.祖訓・唱題・焼香:日蓮聖人の遺文である祖訓を読み、南無妙法蓮華経の題目を唱えます。その間に親族と参列者は焼香を行います。
13.宝塔偈:法華経を信じる者の功徳を称えます。
14.回向:現世の安穏および、死後にいいところに生れることを祈ります。
15.四誓:人々を救うための4つの誓いの言葉を唱えます。
16.三帰:三宝に帰依することを誓います。
17.奉送:諸仏諸尊を送ります。
18.閉式:導師が退場をして、司会(葬儀社のスタッフ)が閉式の言葉を述べます。
以上です。
地域によっては一部省略をされることもあります。
日蓮宗の葬儀では、全員で南無妙法蓮華経を唱えることが重要視されています。
南無妙法蓮華経を唱和するタイミングや、焼香のタイミングなどは導師または司会者からの指示に従いましょう。
日蓮宗の葬儀の祭壇
日蓮宗の葬儀で飾る祭壇には、特に決まりはありません。
日蓮正宗や創価学会の葬儀には樒を使い、花を使うことがありませんが、日蓮宗では、他の宗派と同じように花の祭壇を飾ることも一般的です。
日蓮宗の葬儀のマナー
日蓮宗の葬儀独特のマナーもありますので、1つ1つ解説します。
日蓮宗の葬儀での焼香方法
焼香は、抹香と呼ばれる細かい香を右手の親指と人差し指でつまみ、額までもっていき香炉にくべます。
抹香を香にくべる回数は宗派によって異なりますが、日蓮宗の葬儀での焼香は、3回行うのが基本です。
しかし導師は3回、参列者は1回という教えもあります。
また参列者が多い場合には時間の関係上、1回と指示されることがありますので、その際には指示に従いましょう。
日蓮宗の香典相場と表書き
日蓮宗の場合、香典の相場は他の宗派と特に変わりありません。
自身の年齢や故人との関係性の深さ、地域によっても相場が異なりますが、概ね目安は次の通りです。
親族:3~10万円
兄弟姉妹:5万円
知人・友人:3,000~5,000円
会社関係:3,000~1万円
日蓮宗の場合、四十九日よりも前にお渡しする場合には「御霊前」と書きます。
四十九日を過ぎている場合には、故人は旅を終えて仏となっているため「御仏前」と書きます。
「御香典」は四十九日前後どちらでも使える書き方です。
迷った場合には「御香典」と書いておくといいでしょう。
日蓮宗の数珠の特徴
日蓮宗の正式な数珠は、108個の主玉、2つの親玉、4つの天玉、1つの浄名玉、20個の弟子玉、4つの露玉、5つの梵天房から出来ています。
親玉からは左右それぞれ2本と3本の房が出ており、2本の房が出ている側の親玉は、釈迦如来を表し、3本出ている側の親玉は多宝如来を表すと言われています。
自身が日蓮宗を信仰している場合、もしあたらしく数珠を買うのであれば正式なものを購入するといいでしょう。
日蓮宗を信仰していない、または既に他の数珠を持っている場合には、改めて用意をする必要はありません。
日蓮宗の葬儀のお布施金額
日蓮宗のお布施の相場は、読経1回ごとに約5万円です。
つまり通夜・葬儀・火葬前と、3回読経を行う場合には15万円ほど用意をします。
1回の読経ごとにお布施を渡すのが日蓮宗の特徴です。
最近では通夜・葬儀・火葬前の読経分をまとめて渡すことも増えています。
また戒名は、日蓮宗では法号と呼ばれ、ランクによって金額が異なります。
一番低い一般的なランク「信士」「信女」だと30~50万円、一番高いランクの「院居士」「院大姉」だと100万円以上です。
ランクによる金額の差がかなり大きいことが分かります。
お布施、法号とは別に、導師が食事に参加しない場合や食事の席を設けない場合には御膳代を、お寺以外で葬儀を行う場合には交通費として御車代をそれぞれ5,000~1万円ずつお渡しします。
まとめ
以上、日蓮宗の葬儀の特徴や焼香、香典のマナーについてご紹介しました。
まとめると次の通りです。
- 日蓮宗では誰もが平等に成仏ができるという法華経の教えを重視している
- 日蓮宗の葬儀では、参列者全員で「南無妙法蓮華経」を唱える
- 「南無妙法蓮華経」を唱えるタイミングは導師の指示に従う
- 焼香は基本的には3回だが、1回と指示があった際には指示に従う
- 日蓮宗では、読経の回数によりお布施の金額が異なる
- 日蓮宗では戒名のことを「法号」と呼ぶ
以上です。
日蓮宗の葬儀では「南無妙法蓮華経」を唱和することが特徴的ですが、基本的に導師や司会者の指示に従えば問題ありません。
それでも当日に焦ることがないよう、大まかな流れは把握しておくとよいでしょう。