大阪市立斎場整備事業基本構想は、斎場整備に関して、社会変化への適応と市民サービス向上を目指し、中長期的な安定した運営を確保するための計画です。

次のポイントを押さえた基本構想を掲げています。

  • 年々火葬の需要が増加していること
  • 斎場老朽化
  • 社会変化への対応
  • 市民サービスの向上
  • トータルコストの見直し

構想ではまた、社会変化への柔軟な対応が強調されており、将来的なニーズに合わせた斎場施設の改善や拡充が含まれています。これにより、市民が必要とする葬儀サービスに迅速かつ適切に対応できる仕組みが整備されていくでしょう。

同時に、市民サービスの向上を通じて、葬儀に関する情報提供やアクセスの利便性向上を図り、利用者満足度を高めることが期待されます。運営面では、トータルコストの見直しを行いながら、中長期にわたり経済的な安定を確保し、持続可能な運営を実現することがこの基本構想の重要な目的です。

なお、大阪市立斎場式場では社葬・合同葬などは執り行えません。

概要

大阪市立斎場整備基本構想は、現状の維持だけでなく将来の需要にも焦点を当て、時代の変化に柔軟に対応する考え方が基本です。市民の利便性向上を主眼に置き、斎場の整備では、将来の葬儀需要を見据えた施設改修を進めます。

また、時代の変化に合わせ、市民の期待に応えるために、斎場の機能やサービスに改善を加え、利用者にとってより使いやすい環境を提供することが目的です。同時に、周辺環境との調和を重視し、周辺住民との協力と理解を得ながら施設の改修を進めます。

自然災害などのリスクを考慮した設計を採用し、斎場を安全かつ持続可能な施設として整備しなければいけません。災害時にも地域への貢献度を高めつつ、斎場機能の継続が確保されます。

斎場整備基本構想は次のスケジュールが予定されています。

 

実施内容
2021 PFI手法導入検証
2022 実施方針策定、特定事業選定公表
2023 入札実施、仮契約、議決、本契約
2024~2027 新斎場建屋工事など
2028 利用開始、旧施設の解体工事

大阪市内の斎場の現状

ここでは、大阪市内の斎場の現状として5つの市営斎場と火葬炉の稼働状況を紹介します。

5つの市営斎場

次の5つの市営斎場に関して、特徴を紹介します。

それぞれの特徴をみていきましょう。

瓜破斎場

瓜破斎場は昭和32年に開設され、平成8年には全面改修が行われた斎場です。改修により、比較的新しく清潔感のある施設が誕生し、使い勝手の良い環境が現在でも提供されています。式場は1つの会場のみですが、最大100席を設置でき、さまざまな規模の葬儀やイベントに対応可能です。

瓜破斎場は日本2位の火葬炉数を誇るため火葬スケジュールを抑えるのが比較的容易です。広大で静かな環境が特徴で、自然に囲まれた空間での葬儀が行えるでしょう。また、式場と火葬場が近接しているため、脚の弱い方にとっても負担が少なくアクセスが便利です。

駐車場は最大97台収容可能で、来場者の駐車にも充分なスペースを提供しています。斎場内では、安置からお骨上げまで全ての段階が一貫して執り行えるため、利用者にとってはスムーズで快適な利用が可能です。

このように、瓜破斎場は充実した設備と環境、使い勝手の良さにより、地域の葬儀ニーズにしっかりと応える斎場となっています。

項目 数値
開設年月 昭和32年4月
改修年月 平成8年3月
火葬炉数 30炉
式場数 1室
駐車場 97台

また、瓜破斎場についてはこちらのページでも詳しく解説しています。

北斎場

北斎場は大阪市北区に位置する公営斎場で、周辺は住宅地にありながらも、施設の外観は近代的なデザインが特徴です。斎場内には家族葬や少人数向けの式場が用意されており、アットホームな雰囲気での葬儀が行えます。

北斎場では、式場を2つ連結することで大規模な葬儀にも柔軟に対応可能です。そのため、規模の異なる葬儀に対応し、さまざまなニーズに対応できる斎場となっています。火葬に関しても20炉が併設されており、お通夜から葬式まで一貫して執り行うことが可能です。

北斎場はアクセスが良く、大阪市営斎場の中で人気が高い斎場の1つとなっています。そのため、予約や利用希望が多く、時には1~2日待ちとなることもあるでしょう。地域住民にとって利便性が高く、さまざまな規模の葬儀に対応できる北斎場は、地域社会において重要な葬儀施設として親しまれています。

項目 数値
開設年月 明治9年6月
改修年月 平成13年4月
火葬炉数 20炉
式場数 3室
駐車場 88台

また、北斎場についてはこちらのページでも詳しく解説しています。

小林斎場

小林斎場は大阪市大正区に位置する斎場で、一日葬から家族葬まで、さまざまな形式の葬儀が行えるため、利用者の多様なニーズに応えています。斎場の設備は使い勝手がよく、葬儀の進行やアクセスでも利便性が高いことが特徴的です。また、火葬場が併設されており、葬儀後の手続きをスムーズに行えます。

斎場内には親族用の控室も備えられており、控室では宿泊が可能です。葬儀に参列する親族や関係者が斎場内で滞在しながら、葬儀や告別式の進行に参加できるような環境が整っています。

宿泊が可能な控室は、遠方からの参列者や長時間要する葬儀に参加する親族にとって便利で心地よいサービスです。

項目 数値
開設年月 大正2年6月
改修年月 平成5年3月
火葬炉数 10炉
式場数 2室
駐車場 25台

また、小林斎場についてはこちらのページでも詳しく解説しています。

鶴見斎場

鶴見斎場は大阪市鶴見区に位置し、鶴見中央公園や寝屋川が近隣に広がる斎場です。斎場の立地は自然に囲まれ、静かで穏やかな環境にあります。

平成16年から18年にかけて行われた全面改装により、斎場は新しく清潔感ある雰囲気が特徴的です。

鶴見斎場は、葬儀の進行に必要な設備が式場から控室、火葬場まで一貫して完備されています。そのため、参列者や関係者が斎場内を移動する際の手間が省け、スムーズな葬儀が実現できます。

総合的に見て、鶴見斎場は自然環境に囲まれながらも、現代的で清潔感のある施設を提供し、設備の充実により利用者にとって使い勝手が良い葬儀斎場です。

項目 数値
開設年月 昭和8年2月
改修年月 平成18年11月
火葬炉数 8炉
式場数 1室
駐車場 43台

また、鶴見斎場についてはこちらのページでも詳しく解説しています。

佃斎場

佃斎場は大阪市西淀川区にある公営斎場で、火葬場が併設されています。家族葬から一般葬まで、さまざまな形式の葬儀に幅広く対応可能です。斎場内は清潔感があり、利用者に静かで心地よい雰囲気を提供しています。

特徴は、お通夜の日に宿泊が可能な点です。これにより、遠方からの参列者や長時間かかる葬儀に参加する親族にとって、宿泊施設が用意されていることが利便性の向上につながります。

項目 数値
開設年月 昭和9年3月
改修年月 昭和57年3月
火葬炉数 4炉
式場数 1室
駐車場 43台

火葬炉の稼働状況

火葬炉の稼働状況は、大阪市では令和2年から令和22年にかけて増加しています。火葬の想定件数は右肩上がりで、1日あたりの火葬想定件数は令和2年の99件から令和22年には121件に増加する見込みです。

大阪市の斎場は5つあり、現在1日あたり107件の火葬を受け入れる能力があります。しかし、令和22年の火葬想定件数が121件であるため、火葬可能件数を上回り、年間で約5000件の超過が避けられません。

このような状況から、大阪市では長期的な視点で火葬施設の能力不足を解消していく必要があります。将来的な需要増加に備え、新たな斎場の建設や既存施設の拡充、効率的な運用方法の検討などが求められるでしょう。

出典:大阪市/Ⅱ.斎場整備の必要性と整備計画

なぜ今斎場整備が必要なのか?

今斎場整備が必要な理由として、火葬炉不足が挙げられます。また、築年数が86年にもなる斎場があることから老朽化対策も必要となるでしょう。他にも社会的に求められているクリーンエネルギーの転換や来場者のプライバシー配慮、大規模災害への対策なども斎場整備が必要な理由として挙げられます。

それぞれの理由を詳しく解説します。

人口推移に対して火葬炉が足りない

大阪市における斎場整備が必要な理由の1つは、人口推移に伴う火葬炉の不足です。国立社会保障・人口問題研究会の公表データによれば、大阪市の人口は平成27年に269万人でしたが、令和27年には241万人に減少する予測があります。

一方で、65歳以上の高齢者は平成27年の68万人から令和27年には80万人まで増加する見込みです。

この人口推移から分かるように、高齢化が進む中、火葬の需要が増加しています。高齢者の増加に伴い、火葬炉の利用状況も相応に増加しています。

このような状況から、斎場整備が重要です。整備によって、火葬炉を増設するか、既存の火葬炉の稼働率を上げることが求められます。

出典:国立社会保障・人口問題研究会/日本の地域別将来推計人口

斎場の老朽化

斎場整備が必要な理由の1つは、人口推移に対する斎場の老朽化です。現在の各斎場の築年数は次の通りです。

斎場名 建設年月 築年数
瓜破 昭和49(1974)年10月 46年
瓜破増設分 平成8(1996)年3月 24年
平成13(2001)年3月 19年
小林 昭和54(1979)年5月 41年
小林増設分1 昭和55(1980)年5月 40年
小林増設分2 平成5(1993)年3月 27年
鶴見 平成18(2006)年3月 14年
昭和9(1934)年10月 86年
佃増設分 昭和56(1981)年12月 39年

最も古い佃斎場は築86年となり、他にも40年以上経過した斎場が複数存在します。斎場の老朽化は、築年数の古さだけでなく、建物全体に対する古さの割合も重要です。

火葬場の建物耐用年数は通常50年とされており、これを超えた斎場が増えてきています。建物の老朽化は、安全性や機能性の低下を引き起こし、葬儀や火葬の際のスムーズな進行を妨げる要因となるでしょう。

また、老朽化した建物はエネルギー効率が低くなる傾向があり、維持管理にかかる費用も増大します。そのため、斎場が適切なサービスを提供し続けるためには、新たな整備が必要とされます。

環境に配慮した設備の必要性

斎場整備が必要な理由の1つには、環境に配慮した設備の必要性も挙げられます。現在、瓜破・北・鶴見斎場では都市ガスを、小林・佃斎場では白灯油を火葬の燃料として使用しているのが現状です。

しかし、社会的な動きとしてSDGsや脱炭素の取り組みが進む中で、二酸化炭素排出を抑えたクリーンエネルギーへの移行が求められています。

火葬に使用する燃料だけでなく、電気を効率的に使用する仕組みなど、斎場全体のエネルギー消費でもクリーンエネルギーへの転換が必要です。例えば、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー設備の採用などが考えられます。

環境への負荷を軽減するためには、斎場が持続可能な運営を目指し、環境にやさしい取り組みを積極的に進めなければいけません。斎場整備では、燃料のクリーンエネルギーへの切り替えやエネルギーの効率的な利用を促進することで、地域社会と調和した施設の構築が期待されます。

来場者のプライバシー配慮

来場者のプライバシーの配慮も斎場整備が必要な理由の1つです。通常、故人とのお別れや収骨は炉前のホールで執り行われますが、同じ時間帯に複数の葬儀が行われる場合、他の参列者と顔を合わせることになります。

このような状況では、他の来場者との出会いが、故人とのお別れや感動的な瞬間で、予期せぬ緊張感や不安を引き起こす可能性もあるでしょう。葬儀は遺族にとっては感受性が高まる場面となるため、プライバシーへの配慮は特に慎重な取り扱いが求められます。

斎場整備では、来場者のプライバシーに配慮した設備やサービスが求められます。例えば、複数の葬儀が同時に行われる場合に、来場者同士が接触しないような工夫や、個別のスペースや控室の設置、敷地のレイアウトなど、さまざまな面で考慮が必要です。

大規模災害への対応

斎場整備が必要な理由の1つは、大規模災害への対応力の向上です。大阪府には南北に縦断する断層が存在し、さらに今後30年以内には南海トラフ地震の発生も予測されています。

過去には平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災があり、大阪市でも多くの火葬が行われました。災害発生時には、亡くなった方々を迅速かつ適切に処理し、遺族や地域のニーズに応えることが求められます。そのためには、火葬場の早期復旧と、最大限に稼働率を上げて対応できるような設備が整備されていることが重要です。

斎場整備では、大規模災害時でも迅速な対応が可能なような設計が求められます。例えば、非常時における電力や水の確保、備蓄品の充実などが考慮されるべきです。また、地域との連携や協力体制の構築も重要であり、地域全体での災害対策に貢献できるような施設づくりが求められます。

改修のポイント

斎場改修のポイントとして、サスティナブルな考え方を導入する必要があります。長期的な視点を持って将来を見据えて、持続可能な斎場へと変化していくことが必要となるでしょう。

また、周辺住民への配慮をし、住民のニーズを踏まえた設計をしなければいけません。それぞれの改修ポイントを解説します。

将来を見据えた改修

斎場改修のポイントとして、将来を見据えた改修が必要です。単なる機能維持・回復だけでなく、将来の需要・供給を考慮し、満足度の高い施設とするためにはさまざまな要素を考慮しなければいけません。

まず、人口推移や火葬炉の不足数などを考慮し、ある程度想定される将来でも、斎場が利用者に十分なサービスを提供できるような改修を行うことが重要です。

また、それぞれの改修が具体的に何を目的としているかを明確にし、文書で残すことが重要となります。明確な目的設定は、斎場の長期的な計画や持続的な運営で方針を示し、計画的な施策の実行をサポートしてくれるでしょう。

将来を見据えた改修は、斎場が変化する社会環境に柔軟かつ適切に対応できるようにするための基盤を築くものです。持続的かつ質の高いサービスを提供するためには、将来のニーズや状況を逐一見極め、それに基づいて斎場の改善を継続的に行っていくことが求められます。

住民のニーズに合った設計

斎場改修のポイントとして、住民のニーズに合った設計も重要です。住民のニーズとは、従来のニーズだけでなく、社会の変化に伴う新たなニーズにも柔軟に対応できるような改修が求められることを指します。

住民の要望や期待は多様であり、それに合わせた施設が求められます。例えば、近年のIT技術の革新を受け入れ、wifi環境の提供やリモートでの打ち合わせや参加といった柔軟なサービスが斎場にとって必要となるでしょう。これらの技術を応用することで、遠方に住む親族や友人も葬儀に参加しやすくなります。

また、葬儀の形式も変化しており、家族葬の増加や火葬のみの直葬など、新たな葬儀ニーズが増えてきています。住民の多様な価値観や宗教観に対応できるような斎場の改修が必要です。

周辺環境・住民への配慮

周辺環境・住民への配慮も欠かせません。改修した建物の外観が周囲の景観と合わない場合、地域の住民から反発が生じる可能性があります。

住民への配慮は、単なる斎場の機能向上だけでなく、地域社会との調和を図る観点からも重要です。景観の保全や緑地の有効活用、建物の高さや形状など、地域の特性や規模に合ったデザインを心掛けることが求められます。

特に建物の外観や周辺環境への変更が予定される場合、住民への説明や意見交換の場を提供することが良好な関係の構築につながります。透明性を持ったプロセスを通じて住民の意見や懸念を取り入れ、共感を得ながら改修を進めることが重要です。

サスティナブルな設計

斎場改修のポイントとして、サスティナブルな設計も重要となるでしょう。改修によるコストや竣工直後の短期的なコストだけでなく、持続可能な長期的な視点で設計することが重要です。

メンテナンスの容易性や使用する材料による建物の存命期間など、ランニングコストをあらかじめ試算し、将来の運用に対する見通しを立てなければいけません。長期的目線でコストを試算することで、斎場が長期にわたって効果的に機能し、継続的な運営が可能となります。

また、サスティナブルな設計には環境への配慮も欠かせません。例えば、火葬を含めてクリーンエネルギーの使用を検討し、環境への負荷を最小限に抑えるような施策が求められます。

再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上など、持続可能性に配慮したエネルギーの活用を検討することが重要です。

斎場は社会的な施設であり、その改修は単なる建物の変化だけでなく、地域社会や環境への影響を考慮したものであるべきでしょう。サスティナブルな設計は、地域社会との調和や継続的な運営で重要な役割を果たし、斎場が地域にとって持続可能で有益な存在となるようにします。

災害に対応できる設計

災害への対応は改修の重要なポイントです。南海トラフ地震や津波、記録的な短時間大雨による河川氾濫など、さまざまな災害に備えなければいけません。斎場は非常時でも順調に機能し、地域の安全・安心を支える拠点となることも期待されます。

特に電気系統は災害時に重要な要素です。低床部分に設置された電気系統が水害などによって損傷を受けるリスクがあるため、再配置や自家発電設備の導入などが検討事項として挙げられるでしょう。

災害を考慮した改修によって、電力供給の安定性を確保し、災害時でも最低限の機能を保つことが可能になります。

また、非常口や避難経路の設計、地震に強い構造なども災害への対応で欠かせません。これらの改修によって、斎場は地域住民の避難先や災害時の拠点として、より有効に機能できるようになります。

各施設ごとの改修点

次のそれぞれの改修点を解説します。

  • 告別室
  • 収骨室
  • 式場
  • 駐車場
  • 導線

詳しく内容をみていきましょう。

告別室

告別室は故人と遺族にとって最後の別れの場であり、特にプライバシーに配慮しなければいけません。改修点として、炉室との境目となる化粧扉などに関して、プライバシー保護の仕組みを検討することが含まれます。遺族が心静かに故人との別れを迎えられるような環境づくりが求められるでしょう。

また、告別室の室内全体が安らかな場所となるような空間作りが重要です。心地よい照明や柔らかい色調、静謐な雰囲気などが、遺族や訪れる人々にとって心の癒しとなります。また、宗教や文化に応じた配慮も欠かせません。

告別室は、デザイン性と機能性の両面に留意した設計が必要です。美しさや静謐な雰囲気だけでなく、施設の機能を最大限に引き出し、利用者にとって使いやすく居心地の良い空間とすることが求められます。

告別室の改修で重要なのは、プライバシー保護、安らかな雰囲気づくり、デザイン性と機能性のバランスが大切です。これによって、最後の別れの瞬間が敬虔かつ穏やかなものとなり、利用者や遺族にとって心地よい体験となるでしょう。

収骨室

収骨室は火葬が終了した故人の遺骨が運ばれてきて遺族で遺骨を囲む場所であり、遺族がゆとりをもって収骨を行える空間作りが不可欠です。収骨室としては、広々とした空間、静謐な雰囲気、そして遺族のプライバシーを保護する仕組みが重要となるでしょう。配慮深い空間デザインが、遺族にとって心静かな収骨の瞬間を提供します。

また、火葬炉から収骨室への動線や、収骨室から退室するまでの動線などを考慮することが大切です。動線を考えた設計をすることで、スムーズで円滑な葬儀の進行が可能となります。遺族が感じるストレスを最小限に抑え、故人への最後の別れが整然と行われるような設計が求められるでしょう。

収骨室の改修では遺族の感情や動線を重視し、心地よい環境を提供することが不可欠です。これによって、故人との別れがより穏やかで心に残るものとなり、葬儀の円滑な進行につながります。

式場

時代の変化に伴い、葬儀の形式が多様化しています。従来の大規模な葬儀だけでなく、近年では葬儀の小型化や、葬儀自体が行われない直葬が増加しているのが現状です。そのため、式場はさまざまな葬儀形式に対応できる柔軟性が求められています。

このような変化に対応するために、式場の設計には工夫が必要です。例えば、柔軟な間仕切りや座席配置、規模調整が可能なスペースなど、異なる葬儀形式に迅速に対応できる構造が必要となるでしょう。また、最新のAV機器や通信設備の導入など、テクノロジーを活用した葬儀サービスにも対応することが求められます。

駐車場

単なる乗用車駐車場だけでなく、団体用のバス駐車場も設けることで、葬儀やイベントへの参加者に対応できます。団体用のバス駐車場を設けることで、葬儀施設へのアクセスが容易になり、利用者や遺族にとっても利便性が向上します。

将来的な需要増加に備えた設計も必要となるでしょう。火葬の増加や大規模災害を想定して急激な駐車需要の増加にも耐えられるような設計が重要です。そのため、十分な駐車スペースの確保や、需要予測に基づく計画的な拡張が必要となります。

ただし、これらの改修は近隣住民への配慮が欠かせません。景観を損ねないようなデザインや、関係者以外が容易に停められないような仕組み作りが必要です。配慮をした設計によって、地域との調和を保ちつつ、施設の機能拡張を図ることが可能となります。

導線

葬儀参加者の高齢化を考慮し、斎場施設内の導線が重要なポイントとなります。高齢の利用者にとって負担がかからないような導線設計が必要です。高齢者以外にも車椅子や歩行器の利用者にも対応した設計が含まれます。

プライバシーへの配慮も導線設計には必要です。故人との最後の別れや収骨などの瞬間は特にプライバシーを重視しなければなりません。遺族が心静かに参列できるような導線設計が求められます。

続いて、参加者だけでなく、スタッフ側の導線設計も重要です。葬儀を円滑に進行させるために、スタッフがスムーズに移動できるような導線が必要となるでしょう。スタッフの移動がスムーズになることで、葬儀の進行が円滑に行われ、参加者にとってもスタッフにとってもストレスのない環境が整います。

今後の予定

斎場整備の今後の予定として、環境に配慮したサスティナブルな設計を目指します。サスティナブルな設計とは、火葬場から排出されるダイオキシン類の削減など、環境への影響を最小限に抑えるための取り組みです。

平成12年3月に厚生労働省によって示された火葬場からのダイオキシン類削減対策指針に準拠し、それに基づいた設備を整備することが予定されています。指針基準に準拠することで、環境負荷を軽減し、地域社会との調和を図ることが目的です。

さらに、定期的な測定を行い、その結果を基に随時フィードバックを行っていきます。定期的なフィードバックにより、環境への影響を最小限にしつつ、設備や運営の改善点を把握し、迅速かつ適切な対策を実施していかなければなりません。

同時に、脱炭素社会に向けた社会的な動向にも配慮します。斎場で使用する燃料の選定でも、クリーンエネルギーの導入や再生可能エネルギーの利用など、環境にやさしい選択を進めていく予定です。

出典:厚生労働省/火葬場から排出されるダイオキシン類削減対策指針

小林斎場の改修計画

最初に取り掛かるのは小林斎場の改修です。次の3つのポイントが重要となります。

  • 火葬炉の増設
  • 1件あたりの時間短縮
  • 駐車場の増設

それぞれのポイントを解説します。

火葬炉の増設

火葬炉の増設は斎場の機能向上に直結する重要なプロジェクトです。火葬炉の必要な増設数を考えるには、まず人口予測と死亡率の分析から、年間の火葬受け入れ想定件数を算出します。

また、過去の実績を基に繁忙期や閑散期を考慮し、最も使用頻度の高い月を特定します。令和22年1月が最も使用されることが予測され、5斎場合計で4018件です。これを1日あたりに換算すると134件となります。

現在の斎場では1日あたりに107件までしか対応できない状況です。従って、同様の効率で火葬が行われた場合、134件の受け入れを実現するには、19炉の火葬炉を増設しなければいけません。

この増設により、斎場はより多くの葬儀を効率的かつ迅速に処理でき、遺族に対するサービス向上や待ち時間の短縮が期待されます。増設は将来の需要にも十分に対応するため、継続的な運営の安定性を確保可能です。

1件あたりの時間短縮

現在、火葬に関する業務は火葬炉前の炉前ホールで行われています。この状況では、清掃までの全ての段取りが完了しない限り、次のご遺体を受け入れられません。

また、収骨も炉前ホールで執り行われているため、炉前ホールに滞在する時間が長くなり、他の遺族の方との時間が重複する可能性があります。

対策として、収骨室を別途設けることが効果的です。収骨室の設置により、火葬と収骨を同時に並行して行えるようになります。そのため、炉前ホールでの滞在時間が短縮され、次の葬儀の迅速な準備が可能となるでしょう。

また、遺族同士の時間の重複を避け、より円滑な葬儀の進行が期待されます。

駐車場の増設

現在、小林斎場の同一時間における最大駐車台数は乗用車13台とマイクロバス2台です。しかし、改修後の小林斎場では1時間あたりのべ5件の葬儀受け入れを想定しており、これには増設が必要となります。

改修後の葬儀の受け入れ想定から、乗用車22台分とマイクロバス3台分の駐車スペースを確保しなければいけません。駐車場増設によって、葬儀参列者や関係者の駐車に伴う混雑を緩和し、スムーズな進行が期待されます。

まとめ

今回の記事では大阪市立斎場整備基本構想を解説しました。大阪市立斎場整備基本構想は、現状の維持だけでなく将来の需要にも焦点を当て、時代の変化に柔軟に対応する考え方が基本です。同時に、周辺環境との調和を重視し、周辺住民との協力と理解を得ながら施設の改修を進めなければいけません。

大阪市内には5つの斎場があり、それぞれが老朽化や時代のニーズに合わせた変化を強いられるなど課題を抱えています。高齢者増加による火葬炉不足は特に深刻な課題であり、斎場整備によって解決しなければいけません。

今後は、サスティナブルな設計を掲げ、環境にも配慮した斎場整備が必要となってきています。まずは小林斎場の改修に取り掛かり、火葬炉や駐車場増設によって利用者の利便性向上を目指します。なお、大阪市立斎場式場では社葬・合同葬などは執り行えません。