焼香の意味を知らない方や、詳細な手順が分からない方は多いのではないでしょうか。焼香は日常では目にする機会も少なく、さらに宗派によってマナーが異なるため実際に行う場合に戸惑うことも多いでしょう。

 

今回の記事では、焼香の意味ややり方を解説しています。また、マナーや正しい作法も紹介しているため、これから葬儀に参加する方は参考にしてみてください。

 

焼香とは

 

まずは焼香の概要から解説していきます。焼香の意味と、お墓参りなどで目にする線香と何が違うのかをみていきましょう。

 

焼香の意味

焼香は、インドから伝わる宗教儀式の1つで、香りを目的とした歴史があります。インドでは、芳しい香りが神聖な存在への敬意を示し、心身を浄化する手段とされてきました。

 

一方、日本での焼香は、香りを目的とする意味合いはなく、異なる2つの重要な意味を持っています。日本での焼香の意味は次の2点です。

 

  • 煙によって邪気を払う
  • 故人を浄土へ導いてくれるように祈る

 

1つ目が、香の煙によって邪気を払うことです。香の煙が場を清め、悪しきものを退ける力があると信じられています。

 

焼香は、仏への敬意を示し、故人を浄土へ導いてくれるように祈るための儀式でもあります。仏教の教えに基づき、故人が安らかに浄土へ行けるよう願いを込めて行われなければなりません。

 

線香との違い

線香を用いてお参りする線香焼香も存在し、これは焼香の一種とされています。

 

焼香は主に葬儀や法事の際に行われる儀式です。一方、線香は主にお墓参りや家庭の仏壇に供える際に用いられ、そのため一般的に目にする機会が多いでしょう。

 

お墓参りの際には、線香に火をつけて供え、その煙を通じて故人とのつながりを感じ、故人の安らかな成仏を願います。

 

焼香と線香は、どちらも火をつけて使用する香の種類は同じで、香の煙によって邪気を払う意味合いも共通です。香の煙は場を清め、悪しきものを退ける力があると信じられています。また、仏への敬意を示し、故人の成仏を祈る目的も同様です。

 

焼香の基本的な流れ

 

焼香の基本的な流れは次の通りです。

 

  1. 焼香台へ向かう
  2. 押しいただく
  3. 席に戻る

 

喪主や親族がまず僧侶に一礼し、その後に弔問客や来賓へ一礼してから焼香台へ向かうところから始まります。この礼儀は僧侶への敬意と、集まってくださった方々への感謝を示すために必要です。

 

弔問客が焼香台へ向かう場合は、まず軽く会釈をし立ち上がり、次に僧侶と遺族に敬意を表してお辞儀をしましょう。

 

焼香台に到着したら、故人への敬意を表すために、遺影に向かってお辞儀をします。その後、抹香が置いてあるので、右手の三本の指でつまみ、額の高さまで上げて拝みましょう。

 

この動作を「押しいただく」と表現し、宗派によって異なりますが、一般的にはこの行為を三回繰り返します。

 

焼香が終わったら、焼香台から一歩下がり、再度遺影にお辞儀をすることが必要です。その後、僧侶や弔問客、来賓に対して再度一礼をし、静かに席に戻ります。他の弔問客が焼香を行っている場合は、その邪魔にならないように注意を払いましょう。

 

焼香の3つの形式

焼香には次の3つの形式があります。

 

  • 立って焼香を行う「立礼焼香」
  • 香炉を座ったまま回す「まわし焼香」
  • 座った状態で焼香を行う「座礼焼香」

 

それぞれの特徴を解説します。

 

立礼焼香

立礼焼香は、立ったまま焼香を行う一般的な方式であり、儀式の流れは基本的な焼香の流れに沿う方法になります。

 

自分の順番が来たら、まず周りに軽くお辞儀をしてから祭壇に進みましょう。祭壇に進んだら、まず遺族に敬意を表してお辞儀をします。

 

その後、遺影に向かってお辞儀を行います。これは故人への敬意を表すための重要な動作のため忘れないようにしましょう。その後、抹香を右手の三本の指でつまみ、額の高さまで上げて拝む「押しいただく」動作を行います。

 

押しいただく動作の回数は宗派によって異なるため、事前に周りの人が何回行っているかを観察しておくとよいでしょう。

 

焼香を終えたら、あらためて遺影にお辞儀をし、次に遺族に敬意を表してお辞儀をします。最後に静かに自分の席に戻りましょう。

 

まわし焼香

まわし焼香は、隣の人から香炉を受け取り、焼香が終わったらまたさらに隣の人に香炉を渡す形式です。まわし焼香は、焼香台を置けない式場やスペースの限られた場所で採用されることが多い形式となっています。

 

香炉と抹香が一緒にお盆に乗せられた状態で回ってきます。焼香が始まると、隣の人からお盆が回ってくるので、その際には軽く会釈をして受け取りましょう。

 

お盆を受け取ったら、まずお盆を自分の膝の上に安定させ遺影に向かって合掌します。抹香を右手の三本の指でつまみ、額の高さまで上げて拝みましょう。

 

焼香を終えたら、次の人にお盆を回します。

 

座礼焼香

座礼焼香は、基本的な流れは立礼焼香と同じですが、移動の仕方に特有の作法があるため注意しましょう。座礼焼香では、立膝で移動するのがマナーとされています。

 

順番が回ってきたら、中腰の姿勢で祭壇前の座布団へ移動しましょう。祭壇前に到着したら、まず正座をして遺族に敬意を表し、次に遺影にお辞儀を行います。

 

その後、立膝の姿勢で祭壇へ移動し、焼香を行いましょう。座礼焼香では、線香を用いることが多く、線香を使用する際は火を息で吹き消すのはマナー違反とされているため、手であおいで消すように注意します。

 

焼香が終わったら、再び立膝の姿勢でやや後ろへ下がり、遺族への一礼が必要です。その後、中腰の姿勢で自分の席へ戻ります。

 

焼香の宗派ごとの作法

焼香で押しいただく回数は宗派によって異なります。具体的には次の通りです。

 

宗派 焼香の回数
天台宗 決まりはなし
真言宗 押しいただき3回
浄土宗 押しいただき1~2回
浄土真宗・本願寺派(西) 押しいただかずに1回 ※香炉に落とすのみ
浄土真宗・東本願寺派(東) 押しいただかずに2回 ※香炉に落とすのみ
臨済宗 1回 ※押しいただく決まりはなし
曹洞宗 2回 ※1回目は押しいただき、2回目はそのまま落とす
日蓮宗 押しいただき、1回 ※3回の場合あり

 

焼香のマナー

基本的な焼香のマナーを紹介します。葬儀に参加する場合は失礼のないように事前に確認しておくことが重要です。

 

数珠を持参する

焼香の際に数珠を持参することは、必須ではないものの、社会人としてのマナーです。数珠には、略式数珠と本式数珠の2種類があります。

 

略式数珠は、どの宗派でも使用できる汎用的な数珠であり、比較的価格が安いことが特徴です。これに対して、本式数珠は各宗派に対応したもので、価格は1万円から3万円が相場となっています。

 

どちらの数珠を使用してもマナー違反にはなりませんが、焼香直前に周りの人から数珠を借りるのは厳禁です。数珠は個人の信仰を象徴するものであり、他人の数珠を借りることは礼儀に反する行為とみなされます。

 

また、宗派ごとに数珠の持ち方や扱い方が異なるため、注意しましょう。

 

遺族への挨拶

焼香の際、遺族への挨拶は重要なマナーです。焼香を行う前に、遺族に対してお悔やみの言葉を伝えることが求められます。

 

お悔やみの言葉を述べる際には、「ますます」や「たびたび」などの重ね言葉を使用してはいけません。重ね言葉は、不幸が重なることを連想させるため、葬儀の場では避けるべきとされています。

 

具体的には、「ご愁傷様です」「お悔やみ申し上げます」などのシンプルで丁寧な表現を使うことが望ましいでしょう。

 

まとめ

今回の記事では、焼香の意味と具体的なやり方を解説しました。日本での焼香は、香りを目的とする意味合いはなく、香の煙によって邪気を払うことや故人の成仏を祈ることなどの意味があります。

 

焼香には3つの方式があり、それぞれにマナーが異なるため注意しましょう。また、宗派によって押しいただく回数が異なるため、自分の番が来る前に前の人に注目し、マナー違反とならないように注意してください。

 

3つの形式それぞれの具体的な流れも紹介しているため、これから葬儀に参加する方は参考にしてみてください。