カトリックの葬儀は、仏教の葬儀と異なり、いくつかの注意点があります。知らないで参列した場合にマナー違反となる可能性があります。死生観がそもそも異なることから、お悔やみの言葉が失礼にあたることなどに注意しなければなりません。
今回の記事では、カトリック葬儀の考え方や流れを解説しています。また、参列する場合のマナーも紹介しているため、これからカトリックの葬儀に参列する方は参考にしてみてください。
カトリックの葬儀とは
カトリックの葬儀には、日本で馴染みのある仏教とは異なる点がいくつかあります。カトリックの葬儀に関して次の内容を解説します。
- 死は祝福されるものと考えられている
- 看取るところから始まる
- 追悼ミサを執り行う
- カトリックとプロテスタントの違い
それぞれのポイントを詳しくみていきましょう。
死は祝福されるものと考えられている
カトリックの葬儀では死を迎えることが祝福として理解されています。カトリックの考え方は他宗教、特に仏教との違いを示しています。仏教では死は不吉で不運な事象とみなされ、深く悲しむべき別れの時とされることが一般的です。
一方、カトリックの信仰では、死は全く異なる意味合いを持ちます。信者にとって死は現世での過ちから解放され、創造主である神の元へ迎え入れられる瞬間です。新しい永遠の命の始まりとして肯定的に解釈されています。
このような死生観の違いは葬儀の形式や雰囲気にも表れており、カトリックの儀式では悲しみの中にも希望と救済の要素が織り込まれているのが特徴です。
看取るところから始まる
カトリックの葬儀の特徴的な点は、実際の死を迎える前の段階から儀式が始まることです。宗教的儀式が死後に執り行われる仏教とは異なり、カトリックでは臨終を迎える人のそばに神父が寄り添います。
神父は、塗油の秘跡を授け、聖体を分かち合う聖体拝領などの儀式を執り行います。カトリックでは死は単なる終わりではなく、神の元への旅立ちの過程として捉えられており、その旅立ちの準備が生前から丁寧に行われます。
追悼ミサを執り行う
カトリックでの追悼ミサは故人を偲ぶ大切な機会として位置づけられている儀式です。
追悼ミサでは、教会に遺族や親しい方々が集まります。そこで厳かに聖歌が歌われ、聖書の言葉が朗読されることで、故人との思い出を分かち合い、魂の安らぎを祈ることが特徴です。故人との精神的なつながりを再確認する場であり、悲しみを共有しながらも希望を見出す時間です。
仏教での法要に相当するこの儀式は、カトリックの死生観に基づき、遺された人々に慰めと癒しの場を提供します。故人を懐かしむと同時に、信仰を通して前進する力を得る貴重な機会です。
カトリックとプロテスタントの違い
キリスト教の二大宗派であるカトリックとプロテスタントは、葬儀の形式でいくつかの違いが見られます。まず、葬儀の進行役として、カトリックでは神父が儀式を執り行うのに対し、プロテスタントでは牧師がその役割を担います。
カトリックの葬儀では、葬儀と告別式が別々に執り行われる形式が取られることが一般的です。一方、プロテスタントでは葬儀と告別式を一連の流れの中でまとめて行う傾向があります。
呼称の面でも細かな違いがあり、日本の仏式葬儀では「通夜」と呼ばれる儀式に相当するものを、カトリックでは「通夜祭」プロテスタントでは「前夜式」と表現することも違いの1つです。
カトリックの葬儀の流れ
カトリックの葬儀の流れは次の通りです。
- 危篤・臨終
- 通夜の祈り
- 葬儀・告別式
- 出棺式
- 火葬
- 追悼ミサ
それぞれの流れのポイントを解説します。
危篤・臨終
カトリックの葬儀は、死の瞬間を迎える前から始まります。信者が危篤状態に陥ったと医師から告げられた場合、家族や近親者はすぐに危篤状態の信者が所属している教会に連絡を取り、神父の来訪をお願いしなければなりません。
この緊急の呼びかけに応じて、神父は死を迎えようとしている信者のもとに駆けつけます。臨終の時が訪れると、神父は特別な臨終の祈りを唱えます。この神聖な瞬間に、神父は死にゆく人に罪の赦しを与え、魂が安らかに神のもとへ帰れるよう加護を祈る流れです。
カトリックでは死は単なる生命の終わりではなく、神との新たな関係の始まりとして捉えられており、その移行の瞬間に神父が立ち会うことが重要視されています。
通夜の祈り
カトリックの伝統的な葬儀儀式の中には本来「通夜」の概念は存在していませんでした。しかし日本のカトリック教会では、地域の文化や習慣を尊重する姿勢から、日本の伝統的な葬送儀礼に配慮した対応がなされています。
「通夜の集い」と呼ばれる儀式が行われることが一般的で、参列者たちが故人との思い出や別れの言葉を分かち合う場となっています。
通夜の祈りでは、神父が死の意味や神の救いについての説教を行い、厳かな雰囲気の中で聖歌が斉唱され、聖書の言葉が朗読されることで、故人の魂の安らぎを祈ります。そして参列者による献花を通して、故人への敬意と愛情が表現されるのです。
葬儀・告別式
通夜の翌日に「葬儀ミサ」と「告別式」という2つの別個の儀式が執り行われます。特に重要なのが「ミサ聖祭式」と呼ばれる荘厳な儀式です。ミサ聖祭式は主に2つの部分から構成されています。
最初に行われる「ことばの典礼」では、聖書の朗読や神父による説教を通して、神の言葉に耳を傾け、死と復活の意味を深く考える時間です。続いて執り行われる「感謝の典礼」では、キリストの死と復活を記念し、パンとぶどう酒を通してキリストとの一致を体験します。
出棺式
出棺式は、故人との最後の別れを告げる場面です。胸の内にある感情や言葉にならない思いを、この時に声に出して伝えます。
カトリックの死生観を尊重し、参列者は故人に対して別れを告げるだけでなく、「神のもとで安らかに」という祈りと希望を込めた言葉を贈ることに注意しましょう。
火葬
出棺式を終えた後、故人の遺体は火葬場へと運ばれます。そこで神父または参列者によって最後の祈りが捧げられた後、火葬の手続きが進められます。
最後の祈りでは、故人の魂が神のもとで安らかに受け入れられることを願い、遺体から解放された魂の旅立ちを祝福することが特徴です。
火葬の工程が完了すると、日本の仏教の葬儀と同様に、家族や近親者が集まって故人の遺骨を丁寧に骨壺に納める儀式が行われます。
追悼ミサ
カトリックでは、火葬後も故人を記念する儀式が続きます。追悼ミサでは、遺族や故人と親しかった人々が自宅や教会に集まります。
神父の司式のもと、参列者全員で聖書の朗読に耳を傾け、厳かな聖歌を声を合わせて歌います。儀式を通して、故人の魂の平安を祈ると同時に、遺された人々の悲しみを癒し、信仰による慰めを与えることが目的です。
カトリックの葬儀のマナー
カトリックの葬儀のマナーとして次のポイントに気を付けなければなりません。
- お悔やみの言葉は述べない
- 献花する順番に注意
それぞれのポイントを参考にしてみてください。
お悔やみの言葉は述べない
カトリックの葬儀に参列する際に知っておくべきマナーの1つに、弔問の言葉の選び方があります。カトリックでは死に対する独特の捉え方があるため、一般的な「お悔やみ申し上げます」などの表現は適切ではありません。
カトリックは死を悲しむべき終わりではなく、神のもとへの帰還という祝福された出来事と考える死生観に基づきます。そのため、悲しみや同情を表す「お悔やみ」の言葉よりも、故人の魂の安らぎと遺族への神の慰めを願う言葉が好まれます。
具体的には、「安らかな眠りをお祈りいたします」や「ご遺族に主のお慰めがありますように」などの表現が適しているでしょう。
献花する順番に注意
カトリックの葬儀では仏教の焼香に代わり、献花の儀式が行われます。参列者は一輪の花を捧げることで故人への敬意と祈りを表します。ただし、献花の順序に注意しなければなりません。
献花の順番は次のように決められています。
- 司祭
- 喪主
- 家族
- 親戚
- 友人や知人
失礼のないように対応するためにも、順番には気を付けなければなりません。ただし、教会ごとに違いがあり、特に司祭が最後に献花する場合もあるため、事前に進行順序を確認しておくことが望ましいでしょう。
まとめ
今回の記事では、カトリックの葬儀を解説しました。カトリックの葬儀では死を迎えることが祝福として理解されています。信者にとって死は現世での過ちから解放され、創造主である神の元へ迎え入れられる瞬間です。新しい永遠の命の始まりとして肯定的に解釈されています。
宗教的儀式が死後に執り行われる仏教とは異なり、カトリックでは臨終を迎える人のそばに神父が寄り添うことも特徴の1つです。
カトリックの葬儀の一般的な流れや、参列する際のマナーも解説しているため、カトリック葬儀に参列する方は参考にしてみてください。