近年注目を集めている葬儀の形式の1つに「自宅葬」があります。
「自宅で葬儀を行うのは、昔のこと」そう思われている方が多いかもしれません。
しかし実は、近年再び自宅葬を行う人が増えています。
ここでは、自宅葬とは何か、増えつつある背景、自宅葬の流れやメリットとデメリットや注意すべき点を解説します。
自宅葬とは?
その名の通り、自宅で行う葬儀のことです。
1990年代ごろ以前までは、自宅での葬儀は一般的で、親族や近所の方々で協力して自宅に白黒の幕を張ったり、もてなしの料理の準備や片付けを行っていました。
しかし1990年代ごろから、都市化や近所づきあいが希薄になったことなどが影響し、葬儀専用に作られた葬儀場での葬儀を行う人が増加。
その結果自宅で葬儀を行う人が1割ほどまで下がっていました。
しかし近年、再び自宅葬を行う人が徐々に増え始めているようです。
ごく親しい人だけで小規模に行う家族葬が増加したことが理由の1つ。
人数が少ないため自宅でも手狭にならない、プライベートな空間でゆったりと過ごせるということで注目を集めています。
自宅葬の流れ
自宅療養中などに亡くなった場合は、かかりつけの医師に死亡診断書を出してもらい、葬儀社に連絡をします。
その際に、葬儀までそのまま自宅に安置しておくか、安置施設に安置するかを選びましょう。
そのまま自宅で安置する場合にはドライアイスを充て、安置施設に安置する場合には、そこまで搬送をします。
病院や介護施設などの自宅以外で亡くなった場合、または自宅で突然亡くなり、警察に搬送された場合にも、葬儀社に連絡をして自宅に安置するか、安置施設に安置するかを決めます。
そして搬送をしたあとで、葬儀についての打合せをします。
もし自宅以外のところに安置した場合には、お通夜または葬儀当日に、改めて安置場所から自宅に搬送。
当日は葬儀を行い、火葬場の予約の時間に間に合うように自宅から出棺します。
お通夜を行う場合には、火葬日の前日の夜から行うのが一般的です。
お通夜・葬儀自体の流れは、葬儀場を借りて葬儀を行う場合と特に変わりません。
故人や遺族の意向に合わせて自由な流れで行うこともできます。
自宅葬のメリット
自宅葬を行うメリットは大きく4つ。ひとつずつ解説します。
故人の願いを叶えられる
故人が生前、長く入院していたり、施設に入っていた場合「自宅に帰りたい」と思っていたかもしれません。
自宅葬ではそんな故人の願いを叶えてあげることができます。
遺族が「最後は住み慣れた自宅に帰してあげたい」という理由で自宅葬を選ぶ場合も。
故人が帰りたかった場所、住み慣れていた場所から送ってあげられるのが自宅葬の大きなメリットです。
時間も形式も自由な葬儀ができる
葬儀場を借りて葬儀を行う場合、使用時間が限られているため、その時間内で葬儀を行う必要があります。
特に前後に別の葬家の葬儀があった場合には、時間を厳守しなければなりません。
自宅葬であれば、その制限がありません。
火葬の時間にさえ間に合えば、自由に時間を過ごすことができます。
また葬儀場を借りる場合には、音響や装飾に関するルールが設けられていることが多く、その制約内で葬儀をする必要があります。
自宅ならそのような制限は一切なく、飾り付けの方法も自由、近所へ配慮をすれば、好きなように音響を使うことができます。
家の中全体を故人の趣味の品や、思い出の品で飾ったりすれば、故人の温もりにあふれた空間に。
形式的にこだわらず、自由な葬儀により故人を見送りたい方には自宅葬がおすすめです。
リラックスした状態で葬儀ができる
葬儀場で葬儀を行うと、非日常的な場所で過ごすことになるため、遺族も少し肩に力が入ります。
また、参列者を招く場合には、参列者への挨拶や気配りをしなければならないため、気疲れしてしまうことも。
住み慣れた自宅での葬儀であれば、遺族はリラックスして葬儀にのぞむことができます。
家族葬であれば、参列者に挨拶をしたり気を遣う必要もありません。
リラックスできる分、心置きなく故人を偲ぶことができます。
式場使用料がかからない
最後は費用面のメリットです。
葬儀を行うために葬儀場、お寺の本堂や会館、コミュニティセンターなどを借りると、その使用料がかかります。
金額は場所によって大きく異なりますが、数万円、高額なところでは数十万円に上るところも。
自宅葬であれば、葬儀場を借りないので当然使用料はかかりません。そのため費用負担が軽くなります。
葬儀の総費用を抑えてもいいですし、式場使用料がかからなかった分、祭壇を豪華にしたりお花の量を増やしたり、棺をいいものにしたりと、他の部分にこだわるということもできます。
自宅葬のデメリット
自宅葬のメリットを解説しましたが、もちろんデメリットもあります。
デメリットも大きく4つ。ひとつずつ解説します。
マンション・アパートではできないことも
マンション・アパートなどの集合住宅の場合、規約によって葬儀などが禁止されている場合もあります。
集合住宅にお住いの場合には、規約を確認するか、管理会社または管理人に確認をしましょう。
またエレベーターや階段が狭く、棺の出し入れが難しい場合もあります。
マンションであれば、共通のコミュニティスペースなどが使えることもあります。あわせて確認してみましょう。
近所の方への配慮が必要
お経を読んでもらったり、音楽を流したり、棺の出し入れをしたりと、多少騒がしくなってしまう可能性があります。
そのため、音の大きさや葬儀を行う時間帯には配慮をしましょう。
また棺の出し入れによって近所の方が驚いてしまったり、噂になってしまう可能性もあるので、事前に伝えておくことをおすすめします。
また近所の方に知られたくない、という場合にはかなり難しくなるため、自宅葬には向いていません。
スペースの確保が必要
自宅葬を行う場合には、少なくとも棺を置いて家族がその部屋に入れるぐらいのスペースが必要です。
お坊さんを呼ぶ場合には、仏具を置いたり、お坊さんが座れるスペースも確保する必要もあります。
少なくとも6畳ほどは確保できる状況なのか確認しておきましょう。
もし参列人数が多いのであれば、より広いスペースが必要です。
準備や片付けが面倒
棺や祭壇、飾り付けのスペースを確保するために片付けたり、葬儀後に物を元に戻したりなどの準備・片付けの手間がかかります。
自宅の中を故人の趣味のものなどで飾ったりする場合には、多少遺族が作業をする必要も。
その準備の時間も、故人を偲ぶ時間になりますが、面倒に感じてしまう場合もあるので注意をしましょう。
参列者がいる場合には、おもてなしの準備や片付けが必要なので、準備や片付けの負担が増えます。
まとめ
自宅葬の流れやメリットとデメリットを紹介しました。
家族だけでの小規模な葬儀の場合には、ゆっくり自由にお別れができる上に費用も抑えられると、メリットが多いと言えます。
もちろん近所への配慮やスペースの確保には注意し、多少準備や片付けが必要な点には注意しなければなりません。
故人の思い出の詰まった自宅で、故人の趣味の品や思い出の品を飾ったりと、自由な内容でゆっくり葬儀を行うことができる自宅葬。
ゆったりと心置きなく故人を偲びたい方は、自宅葬を検討してみてください。