喪主はお葬式の進行役であり、儀式のなかで様々な務めを果たします。
なかでも、参列いただいた弔問客への挨拶は、大切な役割のひとつです。
故人を偲び弔い、遺族を代表してお礼や心情を述べます。
これまで、喪主の経験がなく挨拶の言葉選びに悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
直前に慌ただしく覚えることは控えて、挨拶のマナーを把握しておきましょう。
この記事では、「お葬式の場でふさわしい挨拶が知りたい」「挨拶でNGワードは?」など、お葬式での挨拶の例文や方法についてご紹介します。
場面ごとで適したタイミング、注意すべき点についても解説しますので、基本情報を習得して弔事の場で参考にしてください。
お葬式での挨拶はいつおこなえばよい?
喪主の挨拶には適したタイミングがあります。
ただやみくもに述べるのではなく、儀式において挨拶の必要性を把握しておく必要があるでしょう。
主に重要となる4つのタイミングをお葬式全体の流れに沿って解説いたします。
お通夜
一般的にお通夜は故人が逝去した翌日におこなわれます。
親族や葬儀・告別式に参列できない弔問客を招くことが慣例です。
喪主はお通夜後の「通夜ぶるまい」の場で挨拶を述べます。
「通夜ぶるまい」とは、弔問客やご僧侶を料理などでもてなす食事の場です。
参列いただいた感謝の気持ちや、後日おこなわれる葬儀・告別式の日時や場所などを伝える必要があるでしょう。
葬儀・告別式
葬儀・告別式は通常お通夜の翌日におこなわれます。
葬儀は親族が故人の冥福を祈るための宗教的儀式で、ご僧侶に読経や線香などをお勤めいただきます。
また、告別式は知人友人など弔問客を招きおこなう社会的儀式です。
挨拶をおこなうタイミングは、同日火葬場へ向かう出棺前があります。
弔問客には生前受けた御恩を故人の代わりとなり伝えます。
また故人との関係性や心情なども述べましょう。
初七日法要
故人の逝去から四十九日の間で七日ごとにおこなわれる法要で、亡くなってから初めての供養といえます。
近年では、「繰り上げ法要」として葬儀・告別式の当日におこなうことが一般的ですが、別日を設けて初七日法要をおこなう際は挨拶が必要になるでしょう。
喪主は会場まで足を運んでいただいたお礼や、生前故人が受けた厚誼に対する感謝などを述べます。
精進落とし
「精進落とし」とは、本来四十九日の法要後におこなわる儀式であり、故人を浄土に導く意味合いがあります。
近年は、周囲の負担を配慮するため火葬後におこなうことが習わしです。
喪主は「精進落とし」が始まる前に挨拶を述べますが、後日の法要の案内を合わせておこなう場合があります。
参列のお礼や食事の案内などを述べましょう。
場面ごとの挨拶の例文とは
喪主の挨拶は場面別で述べる内容が異なりますが、共通認識として押さえておきたいポイントとして、「故人との続柄」「参列に対しての感謝の気持ち」「生前故人が受けた温情への礼」「故人の人柄」「締めの言葉(今後の案内)」などがあります。
その場にふさわしい内容を取り入れながら述べる必要があるでしょう。
具体的な例文を以下で解説します。
お通夜(通夜ぶるまい前)のときの挨拶
「本日はお忙しい中、故人◯◯のお通夜にお越しいただきありがとうございました。
◯◯は持病の治療のため入院しておりましたが、昨日永眠しました。
生前は◯◯がお世話になり心より感謝申し上げます。
ささやかですが、お食事を用意しています。
生前の思い出話などお聞かせいただければ幸いです。
なお、葬儀・告別式は◯◯時よりおこないますので、よろしくお願いいたします。」
葬儀・告別式(出棺前)での挨拶
「本日はご多用の中、故人◯◯の葬儀・告別式に参列いただき誠にありがとうございます。
妻は病気を患い昨年◯月から入院しておりましたが、◯月◯日に息を引き取りました。
家族のために働き、尽くしてくれる妻であり母でありました。
生前は多くの皆様からお見舞いいただきましたこと、故人に代わり心より御礼申し上げます。
今後とも家族一同力を合わせて支え合い生きていきます。
本日はありがとうございました。」
初七日法要での挨拶(葬儀・告別式の別日におこなう場合)
「本日は故人◯◯の法要に参列いただきまして誠にありがとうございます。
皆様にはご支援いただきお世話になりました。
心より御礼申し上げます。
皆様には今後とも変わらぬご指導ご厚誼を何卒よろしくお願い申し上げます。
ささやかですがお膳を用意させていただきましたので、時間がゆるすまでおくつろぎいただければ幸いです。」
精進落とし開式の挨拶
「本日はご参列いただき誠にありがとうございました。
皆様のおかげで故人◯◯の葬儀・告別式を無事済ませることができました。心より感謝申し上げます。
ささやかではございますが、精進落としといたしまして、お食事をご用意いたしましたので、ごゆっくりお召し上がりください。
本日はありがとうございました。」
神式やキリスト教の挨拶
宗教や宗派ごとで使用を控えるべき言葉があります。
仏式とは「死生観」が異なるためです。
とくに神式では、「冥福」「供養」などの仏式用語の使用は避けることがマナーです。
また、キリスト教の場合も「弔う」など、故人を悔やむ意味がある言葉の使用は避けるべきでしょう。
神式の葬儀
「本日は故人◯◯の新葬式にご参列いただきありがとうございました。
◯◯の御霊も喜んでいることと存じます。
皆様のご厚誼に感謝申し上げるとともに、残された家族へ変わらぬお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。」
キリスト教の葬儀
「本日はご多用のなか、故人◯◯の告別式に参列いただきありがとうございました。
◯◯は主に召され心の安らぎを得たことと存じます。
生前の皆様からのご支援にあつく御礼申し上げます。
本日は誠にありがとうございました。」
挨拶するときの注意点とは
挨拶する際は、押さえるべきポイントやマナーがあります。
大切な人を亡くした悲しみのなか、完璧な挨拶を述べることは容易ではありません。
挨拶は儀式ごとに機会がありますので、事前に予習して心得ておきましょう。
長々とすることは避けて簡潔に
挨拶は3分以内を目安にして、長く時間をかけることは避けます。
普段は使わない難しい言葉があることや、人前での挨拶に緊張する場面などを想定して、メモ書きしておいても問題ではありません。
また、お通夜や告別式で挨拶の内容が重なることはよいとされています。
大切なことは、演出や弔問客の反応を意識することなく、遺族の代表者として率直な感謝の気持ちを述べることです。
タブー言葉に注意
弔事の場では使用を控えるべき「忌み言葉」があります。
「くれぐれも」「再び」「ますます」などの重ね言葉や、生死に直接関連する「死」「死亡」などです。
「くれぐれも」は「十分に」、「再び」は「今一度」に置き換えましょう。
また、「死」なども、「逝去」や「急逝」に言い換えることがマナーといえます。
まとめ
【場面別】のお葬式の挨拶の例文やタイミング、注意すべき点についてご紹介しました。
当日に慌ててペースを乱すことがないよう、事前に準備を整えておきましょう。
この記事をまとめると以下の通りです。
- 遺族代表として参列いただいたお礼や心情、生前故人が受けた御恩の感謝を述べる
- お葬式のなかで挨拶は幾度とあるが内容が重なることは問題ではない
- 挨拶は1分から長くても3分以内におさめる
- 宗教や宗派に応じた言葉使いをして、忌み言葉の使用は控える