蓮華という言葉をご存知でしょうか?
蓮華とは、蓮の花と睡蓮の総称を表す仏教の言葉です。
仏像の多くが蓮の葉の上に座っていたり、香典袋に薄い蓮の絵が印刷されているのは仏教において蓮華が重要な意味を持つものだからです。
そこでこの記事では、蓮華の意味、なぜ仏教において重要とされているのかという知識から、色などの種類ごとの意味の違いなどについてご紹介します。
蓮華とは?
まず蓮華とは何か、基礎的な知識から仏教における意味、花言葉や特徴をご紹介します。
蓮華の意味
蓮華とは、仏教の伝来とともに日本に伝わった言葉で、蓮の花と睡蓮のことを指します。
蓮華は仏教において象徴的な意味を持つもので、仏像は蓮の花の上に座っていたり、脇に蓮の葉が添えらえれていることが多いです。
仏や菩薩が座っている台座は蓮華座といいます。
また仏教のお経として有名な「南無妙法蓮華経」にも「蓮華」が入っています。
「南無」は「帰依します」という意味。
妙蓮華教は、世の中の真理を蓮の花に例えて説いた教えです。
蓮の花は、泥の中で茎をのばしながら育ち、そして綺麗な花を咲かせます。
そんな蓮の花のように清浄と不浄が混沌と存在する世の中から悟りを見出すことを教えとしています。
以上のように仏教において蓮の花は非常に重要視され、シンボルのようにもなっています。
仏式の葬儀や法事に参列する際に持参する香典袋、仏教の法事に持参するお供え物ののし紙などに、薄く蓮の花が印刷されているのには、このような理由があるからです。
蓮華の五徳
蓮には5つの徳が備わっているとされており、それらを持つものが極楽に生まれることができるとされています。
5つの徳それぞれについて解説いたします。
淤泥不染の徳
蓮は泥の中で育ちますが、その泥の汚れに染まることなく美しい花を咲かせます。
それになぞらえて、どんなに混沌とした環境でも自らは染まらずに清い心を持ち続けることを徳とする教えです。
一茎一花の徳
蓮の花は一つの茎に一つの花しか咲かせません。
それになぞらえ、自らは誰にも代えがきかない唯一無二の存在であるのだから、自分をしっかり持ち続けることを徳とする教えです。
花果同時の徳
蓮の花は花が咲くのと同時に種ができる神秘的な花だと言われています。
実際には同時に花と種ができることはないのですが、蓮はそのぐらい神秘的な花とされています。
それになぞらえて、誰しもが産まれた時から仏になる素質をもっているのでしっかり磨くことを徳とする教えです。
一花多果の徳
蓮の花は一つの花に、多くの種ができます。
それになぞらえ、自らが悟りを開くことで周りのたくさんの人にも伝えて幸せにすることを徳とする教えです。
中虚外直の徳
蓮の茎は外側こそ固いですが、中は空洞になっています。
その茎が天に向けて真っすぐに伸びる様になぞらえて、我を空にして真っすぐ伸びていくことを徳とする教えです。
蓮華の五徳についてご紹介しました。
仏教の教えは難しい印象もありますが、蓮の特徴になぞらえると大変分かりやすいのではないでしょうか。
「泥中の蓮華」
古いことわざに「泥中の蓮華」「蓮は泥より出でて泥に染まらず」というものがあります。
このことわざは、上記の仏教の考え方が使われたもので、泥に例えられた煩悩や世俗の汚れの中にあっても、それに染まらずに清く美しいさまや、そのような人のことを表します。
このように身近なところにも、仏教における蓮華の考え方が反映されているのです。
蓮や睡蓮の花言葉
以上のようなことから、蓮や睡蓮の花言葉には「清らかな心」「神聖」「沈着」などの気高いイメージのものが多いです。
また仏教が由来となり「救ってください」という少し怖いとされる花言葉も。
これはお釈迦様に対して「私も、悟りの世界に連れて行ってください」という救済の願いが込められているとされています。
この花言葉が仏教由来ということを知っていれば、あまり怖さを感じないのではないでしょうか。
蓮と睡蓮の違い
蓮と睡蓮、名前も形も似ているため、見分けるのが難しそうですが実は大きく違いがあります。
蓮も睡蓮も花が咲き切るまでは、水中から芽を伸ばしてくるので大きな違いは見られません。
しかし花が咲いてくる頃になると違いが明確になります。
1つは花の咲く位置です。
蓮は茎が水面から伸びて、水面から浮いた位置で花を咲かすのに対して睡蓮は水面に浮かぶような形で花を咲かせます。
また葉にも大きな違いがあります。
蓮の葉は円形で、花と同じように水面から浮いた位置に広がり、表面にツヤがありません。
睡蓮の葉は円形に大きな切れ込みが入っているのが特徴的で、花と同じように水面に広がり、表面にはエナメル性の光沢があります。
仏教の意味合いではこのような植物学的な意味の違いはなく、それぞれの区切りは曖昧です。
蓮華の色と意味の違い
蓮華の花には様々な色があります。
仏教においてはそれぞれに意味があるとされており、仏教の経典「摩訶般若波羅蜜経」には、白・赤・黄・青の4色について書かれています。
それぞれの呼び方は、白蓮華、紅蓮華、青蓮華、黄蓮華です。
それぞれの意味をご紹介しましょう。
白蓮華
4色の中で最も重要視されているのが、白蓮華です。
白蓮華はその真っ白な色から煩悩や欲望に惑わされない、清らかな心を表すとされています。
紅蓮華
白蓮華の次に重要視されているのが、紅蓮華です。
有名なアニメ映画の主題歌の題名となっていることから、聞いたことがある言葉かもしれません。
紅蓮華は仏の大悲から生じる救済を意味しています。
仏教用語の八寒地獄の七番目として紅蓮地獄というものがあり、紅蓮はその略です。
その地獄に落ちた者は、ひどい寒さにより皮膚が避けて流血し、まるで紅色の蓮のようになってしまうという少し怖い意味合いもあります。
青蓮華と黄蓮華
白蓮華と紅蓮華は蓮の花なのに対して、青蓮華と黄蓮華は睡蓮です。
青蓮華は仏や菩薩の目に例えられることもあります。
未開敷蓮華と開敷蓮華
今にも開きそうな蓮の蕾を未開敷蓮華と呼び、開花している蓮華を開敷蓮華と呼びます。
未開敷蓮華を持っているのは観音様です。
観音様は正確には観音菩薩といい、修行中の身のためまだ開いていない蕾を持っています。
あらゆる人の願いを叶え、救うために働く観音様の姿を表しているのです。
一方開敷蓮華は、修行を経て悟りを開いた状態を表します。
そのため如来と呼ばれるお釈迦様が悟りを開いた後の仏像は、開いた蓮華の上に座っていることが多いです。
まとめ
以上、この記事では蓮華の意味や仏教における重要性、種類ごとの特徴についてご紹介しました。
まとめると次の通りです。
- 蓮華は蓮の葉と睡蓮の総称
- 蓮の葉の泥の中から美しい花を咲かせる様子になぞらえて、悟りを開く仏教のシンボルとなっている
- 蓮の五徳のような特徴を持つものが極楽に生まれると言われている
- 蓮華には4つの色があるとされており、それぞれに意味がある
- 未開敷蓮華と開敷蓮華があり、菩薩として働く観音様は未開敷蓮華を持っている
以上です。
難しそうな仏教の教えでも蓮の花をイメージすると、とても理解がしやすくなるのではないでしょうか。
蓮華については様々な逸話がありますので、興味がある場合にはお坊さんに聞いてみると色々なお話を聞くことができるかもしれません。