告別式の花入れ

遺族は火葬の儀式で旅立つ故人に別れを告げます。

しかし、いざ喪主を務めると、棺に何を入れたら良いのか見当がつかない場合があります。

お葬式の場は慌ただしく冷静な判断ができないものです。

この記事では、棺の中にはどのような物を納めたらいいのか、避けた方がいいものなどをご紹介します。

また、入れる物に困ったときの解決方法も合わせて解説しますので、儀式を滞りなく進めるための参考にして下さい。

 

副葬品にはどのような意味がある?

故人を火葬するときに棺の中に埋葬する物を副葬品といいます。

故人が思い入れのある物や、遺族が希望する物を棺に入れて荼毘(だび)に付すのです。

副葬品を入れることは、故人の冥界での幸福を祈る意味があります。

副葬品は火葬した後にお墓に納めるケースもありますが、多くの場合、火葬前の棺に入れて供養することが一般的です。

 

副葬品の歴史について

副葬品は古くから根付いている慣習で、その歴史は旧人類の時代まで遡ります。

今から約4万年前の一部の人類では、当時から死者を弔う文化があり花などを副葬品として埋葬していました。

これらは出土した化石の研究結果からも明らかになっています。

また、エジプトの古墳時代や中国の王朝時代にも副葬品の文化があったと考えられています。

この時代の副葬品は、故人の死からの再生や宗教的な意味だけではなく、社会的な立場にある人が自分の権威性を表すための1つの手法でもありました。

これらの文化が時代の流れとともにだんだんと変化して、現代のスタイルに定着したのです。

 

棺に入れていいものとは?

副葬品に決まったルールはありませんが、故人を見送る品としてふさわしいものがあります。

火葬するための機械や設備に支障が無いものが適切です。

具体的には、故人の好きだったものや嗜好品、生活に関連するものなどです。

また、よく選ばれる品の1つに「故人が希望していたもの」があります。

生前に終活をしていて、故人から強い要望があったときは、その物を棺に納めてあげることが遺族の務めといえます。

その他、遺族から故人へ思いを込めた品などを入れる場合もあります。

具体例を下記で紹介します。

 

【具体例】よく選ばれる副葬品

①愛用品

生前によく着用していた衣類や、身に付けていたものなどを入れることがあります。

愛用品を選ぶときは、燃えやすい素材が良いでしょう。

一般的に、故人は亡くなると白装束を着用するため、衣類などを納めるときは棺の布団の上に置きます。

納棺のときにあらかじめ衣類を着せておくことも可能ですが、死後硬直が始まる前に着用する必要があるため、葬祭場の担当者に早めに相談しておくことが必要です。

 

②食料品・嗜好品

生前好きだった食べ物や飲み物を入れる遺族は多いです。

死後の世界でも好きなものを味わってほしいという遺族の願いを表しています。

お菓子やコーヒーなど小さく棺の中に納まるものであれば問題ありません。

お酒などの場合は、瓶などは避けて燃える紙製のタイプが良いでしょう。

また、たばこなどの嗜好品を入れる場合もあります。

 

③遺族や参列者からの手紙

感謝の気持ちを込めた故人宛の手紙を棺に納めることもあります。

量が多いと燃え残る可能性があるため、数枚に限定して納めましょう。

また、鶴などの折り紙を副葬品とすることもあります。

こちらも、量が多いと炉に影響するため事前に火葬場に相談しておきましょう。

 

④趣味の品

故人の趣味の品を棺に入れることも可能です。

絵画や刺繍、手帳、人形などを副葬品にすることができるでしょう。

思い入れがあり手向けの品にふさわしいとされています。

その他、故人が希望していた品などがあればできるだけ一緒に納めましょう。

ただし、二酸化炭素を排出するポリエステルなどの素材は避けます。

 

⑤花

花を棺に納める遺族も多いです。

主に故人が好んでいた花や、ゆかりのある花などが良いでしょう。

仏式の場合、出棺のときに供花を棺に納める習わしがありますが、副葬品とは異なります。

供花とは別で用意しておきましょう。

 

⑥巡礼で使用したもの

御朱印帳などを副葬品とすることもできます。

巡礼には死者への思いや善行を積む意味があり、仏式の場合は関係の深い品です。

 

棺に入れるべきではないものとは?

チェック

棺に入れてはならないものとしては、具体的に何があるのでしょうか。

燃やしたときに炉や機械、設備の故障に繋がるものや、危険性があるもの、燃えにくいもの、などは避けなければなりません。

火葬場によって差がありますが、具体的にはビン・缶類や、ビニール・プラスチック類、分厚く燃えにくい紙や大量の副葬品などは良くありません。

もし自分で判断ができないときは、火葬場や葬祭場に事前に確認しておくことをおすすめします。

下記のよくある例を参考にして下さい。

 

【具体例】副葬品に適していないもの

①ペースメーカー

ペースメーカーは可燃すると爆発する恐れがあります。

故人が身に付けているときは、事前に火葬場に連絡しておくことが必要です。

②装飾品

メガネやジュエリーなどは、燃やすと炉の故障に繋がります。

また、遺骨にも悪影響を及ぼし骨上げができない恐れもあるでしょう。

そのため棺に入れることはふさわしくありません。

時計などの貴金属類も避けましょう。

 

③お金

小銭を棺に入れることは認められていません。

また、紙幣に関しても避けることがマナーとされています。

一部の地域では小銭を副葬品として儀式に用いることがありますが、実物の硬貨ではなく紙などで作られた代替品を使用しています。

 

④スプレーなど

ガスを含むスプレーなどは、破裂するなど危険性が高いため棺に入れることはふさわしくありません。

 

⑤燃えにくいもの

スイカやメロンなど水分を多く含む果物は燃えにくいため避けましょう。

また、雑誌など分厚い紙類も燃え残る可能性があるため適していません。

 

もし入れるものの形や素材がNGだった場合

入れたいものの希望があっても、形や素材がふさわしくないなどの理由から納めることが難しい場合もあります。

故人の旅立ちに哀悼の意を表すため適切な対処に努めましょう。

 

写真や絵に変更する

大きさや質に問題があるなどの理由で納めることが難しい場合は、その物を写真や絵にすることで副葬品として扱うことができます。

写真や絵であれば、大量でない限り棺に納まり燃え残る心配がありません。

 

素材自体をかえる

希望するものの素材が環境や安全面に影響するため、困ることもあるでしょう。

この場合は、燃やせる素材の物に変えることで解決できます。

例えば、プラスチックを木製にする、ビニールを紙に変えるなどです。

故人の趣味が野球だった場合は、金属バットから木製バットに変えて納めることで解決できるでしょう。

 

まとめ

火葬のとき、棺に入れていいものやダメなものについてご紹介しました。

哀悼の意を表すためにも、故人のためにふさわしい副葬品を選ぶことが遺族の責任です。

もし、素材など入れることが困難な場合は、実物ではなく代替品を入れるなどして対応しましょう。

  • 故人と関係のあるものや好きだったものなどを入れることが一般的
  • 古来の旧人類時代や古代エジプト時代から文化がある
  • 火葬場の機械が故障するものや、危険なもの、燃えにくいものは避ける
  • 希望するものが難しい場合は、写真や絵などの代替品を入れる
  • 不明な点があれば火葬場や葬儀社に問い合わせる